日本とフィンランドの児童生徒(小5~中3)計744名(男子360名、女子384名)を対象に、いじめをしない、させない、止めさせる力、いわゆる「いじめ防止能力」の国際比較を行った。本調査において実施した「国際版いじめ防止能力尺度」(暫定版)の各項目に対する回答に対して、「いじめ防止能力」が高いと判断される回答から順に、3点から0点という得点を付与し、各項目得点の平均値および標準偏差を算出した。その結果、平均値が最も高かった項目は、日本では「誰かに嫌なことをされている友だちに対して何とか力になってあげたい」(2.21)であるのに対し、フィンランドでは「誰とでも仲良くする」(2.71)であった。一方、平均値の低かった項目は、日本では「誰かに嫌なことをされたら、先生に相談する」(0.92)であるのに対し、フィンランドでは「友だちが嫌がることはしないと絶対言い切れる」(1.31)であったことから、日本では「いじめ」を教師に相談しにくい現状が改めて明らかになった。 また、「国際版いじめ防止能力尺度」(暫定版)について、主因子法・プロマックス回転による因子分析を行ったところ、最終的に「危機介入」、「感情統制」、「援助要請」、「意思伝達」という4つの下位尺度22項目から成る「国際版いじめ防止能力尺度」が開発された。なお、いじめ防止能力得点は、各下位尺度を構成している項目の得点を単純に合算する方式で算出することにした。そして、この尺度を用いて、日本とフィンランドの「いじめ防止能力水準」の国際比較を行った。t検定の結果、「国際版いじめ防止能力尺度」の「危機介入」を除く3つの下位尺度および全体得点において、フィンランドの児童生徒の方が日本の児童生徒よりも有意に「いじめ防止能力得点」の高いことが明らかになった。
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