研究実績の概要 |
本年度では,1)実際の心理尺度データに対してDIF(Differential Item Functioning:特異項目機能)分析を応用し,評定者間の差異に関する分析を行うこと,2)複数のテスト冊子がある状況でのDIF分析の問題点の洗い出しとその解決および実データによる検証に取り組んだ。 1)では,3~16 歳くらいまでの子どもの内在化・外在化問題を測定するための国際標準ツールであるStrength and Difficulties Questionnaire (SDQ; Goodman, 1997)の調査データに対して,子どもの自己評価のほか,父親,母親,教師の評定データについて,DIF分析の手法を応用して,評定者間の差異を検討することを試みた。この研究により,データ構造をどのようにしてDIF分析を行うのかで,その結果が異なることが示された。この成果に関して複数の学会発表を行った。 2)では,問題項目が異なる(共通項目は存在する)複数のテスト冊子において,できるだけ情報を多く用いる形でのDIF分析の手法について検討した。本研究で提案してきた素点を用いたDIF検出方法では,素点の合計点を用いていたのに対し,この部分を項目反応理論(Item Response Theory; IRT)の潜在特性尺度値を利用することで,共通項目以外の部分の情報も取り入れた形でDIF分析を行うことが可能となった。。またこの手法を,欧州言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages :CEFR)の能力記述文(descriptors)に関する質問紙調査データに適応することも試みた。この成果については,2019年度の学会で発表を行う予定である。
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