研究課題/領域番号 |
16K04290
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大村 一史 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (90431634)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 実行機能 / 発達障害 / 個人差 / 実験系心理学 / 脳・神経 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、定型発達内の健常大学生(男性14名、女性19名)を対象として、半側視野呈示の情動処理課題を実施した。課題遂行時の課題成績および事象関連電位(event-related potential: ERP)を計測し、実行機能の大脳半球機能差およびその機能差が情動処理に及ぼす影響を検討した。これまでに実施した解析から、障害特性(衝動性傾向および自閉性傾向)の影響はほとんど認められなかったため、今年度は性差のみに着目し、情動価を伴った刺激(ここでは表情によりカテゴライズされた顔刺激)の右半球優位の処理過程にどのように反映されるかを顔処理に関係するERP成分とされるN170を対象として明らかにしていくことを目的として再設定した。しかし、未だサンプル数が少ないため、N170の潜時と振幅を指標とした顔処理における右半球優位は確認されるものの、性差がその優位性をどのように修飾するかは明らかにするまでには至っていない。 上記の情動処理課題を行う傍ら、これまでの一連の実行機能に関する研究において、心理実験を駆使して収集したデータを再解析し、実行機能の発達差に関する論文を発表した。小学生の実行機能を対象としたこの研究では、発達上の実行機能の性差は認められなかったものの、小学生における数処理能力と実行機能の発達差の乖離を明らかにすることができた。数処理能力は小学校入学前後ごろには既に成熟していると考えられるが、実行機能は小学校低学年から高学年にかけて成熟が続くことを確認された。また、研究成果を実際の指導場面に応用した取り組みも並行して実施し、その成果を報告した。発達障害のある中学生男子生徒に対して、障害特性に応じて実行機能の向上をねらいとした指導を行うことによって、社会適応行動の改善を促す効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年8月中旬に発生した脳波計の原因不明の故障の精査・修理作業は、2018年4月初旬に完了したが、想定よりも長期間を要してしまった。修理作業完了後も予期せぬ電極の不良が複数回発生したため、2018年度も想定した十分な実験の実施が不可能であったことから、補助事業期間の延長を申請するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
脳波計の故障は経年劣化と毎回の使用による劣化が断線の原因だと判断できるため、新規にアクティブ電極セットを購入し、複数の電極セットを交互に使用する研究体制を整える予定である。これにより、遅延リスクを回避しつつ、実験実施を安定させ、サンプル数を増やしていくことが可能となる。また脳波計測の際は、実験者である指導学生に丁寧にアクティブ電極セットを取り扱うことなどを徹底する教育も推し進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年8月中旬、脳波計に原因不明の故障が発生し、国内代理店および海外製造元で精査・修理を行うこととなった。一連の精査・修理作業は2018年4月初旬に完了したが、想定よりも長期間を要してしまい、その後も予期せぬ電極の不良が複数回発生したため、十分な実験の実施が不可能であったことから補助事業期間の延長を申請した。次年度に繰り越した余剰分を新規のアクティブ電極セットを購入する費用に充当する予定である。
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