研究課題/領域番号 |
16K04294
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
工藤 浩二 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90748138)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己分化度 / 尺度作成 / 因子構造 |
研究実績の概要 |
青年期全般を対象として利用可能な自己分化度尺度を作成することを目的に,平成28年度は大学生を対象とした予備的調査を行い,その因子構造および信頼性・妥当性について検討した。 Bowenによる自己分化度に関する主要文献を参考に61項目からなる質問紙を作成し,大学生273名を対象とした調査を実施した。その結果,自己分化度の2つの次元すなわち「対人関係における分化」および「個人の内面における分化」に対応すると考えられる4因子が抽出された。第1因子は「対人関係における分化」に対応するものであるが,主に「集合性」の傾向を反映した10項目で構成された。その信頼性係数は.83となった。第2因子は「個人の内面における分化」に対応するものであり,思考よりも情動が優位になりやすい傾向を反映した8項目で構成された。その信頼性係数は.83であった。第3因子は「対人関係における分化」に対応するものであるが,主に「個別性」の側面を反映した6項目で構成された。その信頼性係数は.79であった。第4因子も「対人関係における分化」に対応するものであるが,対人関係を楽しみつつ自己の目標に向かっていけるような状態を反映した5項目で構成された。その信頼性係数は.75であった。 また,自己分化度の低い者は慢性的に不安が高いとされているため,上記の4尺度について特性不安との相関を検討したところ,いずれの尺度においても「弱い」または「中程度」の負の相関が確認された。 以上により,4下位尺度,計29項目からなる自己分化度尺度が作成され,その信頼性係数には問題がないことが示された。また,特性不安との負の相関が示され,これにより妥当性の1つが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度の研究開始当初は,すでに作成済みであった自己分化度尺度を用いて研究を実行する予定であったが,再検討した結果,新たに自己分化度尺度を作成することが適切であると判断した。その結果,予定していた研究の進捗は遅れている。具体的には,当初予定していた「自己分化度尺度の妥当性の検討」が完了していない。また,「自己分化度の年代別プロフィール作成」については未着手となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度前期中に,現在作成中の自己分化度尺度の妥当性及び再検査信頼性の検討を行う。ついでWeb調査を実施し,自己分化度の年代別プロフィールを作成する。いずれも当初の予定では平成28年度に実施予定であったものである。 平成29年度後期中は,自己分化度とストレス脆弱性との関連の検討(自己分化度仮説の検証)を行う(当初の予定通り)。 最終年度である平成30年度には,自己分化度仮説の文化的要因の影響の検討(当初予定では平成29年度実施予定のもの)及び自己分化度を高める養育態度の検討(当初の予定通り)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の実施予定であったWeb調査が研究の遅れにより実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度にWeb調査を実施し,その費用に充てる。
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