研究課題
いくつかの実験・調査が行われたが、主要なものは以下の2つである。第1にルールを教授された学習者がルール表象を形成した場合でも、そのルールを事例に適用できないことがあることに着目した。そしてルール表象を形成した学習者には2つのタイプ(タイプ1とタイプ2)があることを見出し、タイプ2の者がルールの適用に失敗することを明らかにした。銅を事例に「金属は電気を通す」というルールを大学生に教授し、ルール表象を形成したと考えられる対象者を抽出した。このうち62%(タイプ1)は、物質Aが金属であることが示された場合にAの名前の既知未知に拘わらず、「Aは電気を通す」という事例表象を成立させることができた。残りの38%(タイプ2)は、既知の金属に即しては、それが電気を通すという事例表象を成立させることができたが、未知のものに即しては事例表象を成立させられなかった。ルール適用課題では、既知の金属に関しては両者間の成績に差は認められなかったが、未知の金属に関してはタイプ2の成績がタイプ1より低かった。この結果はルールを広範な事例に適用できるためには、その名前の熟知度に拘わらず、事例が等しくルールに支配されていることを把握できるかどうかが重要であることを示す。第2に、ルールが広範な事例に適用できない現象の原因について、学習者は非典型事例を例外事例と誤って認知しているのではないかという考え方に基づき、それを抑制するために標的ルールとそれに対応する対比ルールを教授することの効果を探った。すなわち根・茎・葉をもつという陸上の植物に関するルールに関して、水中の植物と対比できるような知識を教授することで、非典型事例でもルールを適用するようになるのではないかという仮説を形成実験によって検証した。そして、両者の構造化が図られるような認知過程を辿った学習者にはこの処遇が有効であることを示唆する結果を得た。
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Annual Bulletin, Graduate School of Education, Tohoku University
巻: 5 ページ: 29-41
教授学習心理学研究
巻: 14 ページ: 1-10
Beitraege zum Mathmatikunterricht 2017
巻: 2017年版 ページ: 681-684