研究実績の概要 |
多様な児童集団をあたたかく突き放す教師の学級経営方略が,児童の自律的な学級集団を醸成することを明らかにするために,今年度は以下の3点を実施した。 第一に,2020年度に実施した場面想定法による質問紙調査の結果を検討するために,今年度も場面想定法の質問紙調査を実施した。前回同様,学級児童の学力や性格特性の多様さが異なる複数の仮想学級を文章で提示し,適切な学級経営や効果に関する評定を求めた。加えて,今回は,各仮想学級を担任する難しさに関する評定も求めた。その結果,多様な学級の担任は難しいことが示された。 第二に,2016年から2018年に実施した学級経営パズルのデータを再分析し,論文化する作業を進めた。具体的には,まず,教育心理学に限らず,社会心理学における組織の多様性とリーダーシップの関連に関する研究資料の収集と整理をおこなった。その結果,多様性の定義は幅が広いこと,多様な組織ではあたたかく突き放す学級経営に類似した共有型リーダーシップが効果的である知見を得た。次に,学級集団において教師が児童を判断する視点の研究資料を整理した。その結果,小学校教師特有の児童評価の基準として,学力だけではないこと,学級を集団として運営する立場からは,教師との上下関係の維持や同級生との関係性が重要であることが知見として得られた。 第三に,あたたかく突き放す教師の学級経営方略について,今まで代表として採択された科研費(課題番号:20530593, 23530852, 16K04299)の助成のもと実施した研究調査のデータをまとめて理論化し,博士論文を提出して博士(教育学)の学位を取得した。
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