マズローは,生存欲求が最下層にあり,次に親和欲求,知識欲求等が続き,最上位に自己実現欲求という階層構造を提案している。この階層構造が記憶に及ぼす効果と対応しているという仮説を検討した。記銘語を一つずつ提示して,それに対して最下層の生存欲求に対応する処理をさせると他の階層に位置する欲求の処理よりも記憶を促進する効果が得られた。また,記銘語を2つ提示し,各欲求に対応する規準によって選択された語を記銘させた場合でも,生存欲求に対応する規準が最も記憶を促進した。 しかし,生存欲求以外の親和欲求,知識欲求及び自己実現欲求間には効果の違いは得られず,上記仮説全体の妥当性は示されなかった。
|