研究課題
本研究では、就学前後における子どもの学校適応上の問題に関する基礎研究として、関連要因とされる他者との協働性(協調共感性や他者への信頼など)や問題行動の発達メカニズムを縦断調査から検討した。とくに、子ども自身が園・学校や地域の他者に能動的に関わるソーシャル・キャピタルの形成に焦点をあて、協働性や問題行動との関連を明らかにすることを目的とした。平成30年度の調査では、対象児が幼児期から調査に継続参加している小学2年生から4年生までの約170家庭から回答を得た。小学1年から3年までの3時点のデータを用いて、子どもの協調共感性と地域活動参加への積極性との間の相互影響過程を、各時点の親の権威的養育や仲間数の影響を統制した上で、共分散構造分析を用いた交差遅延効果モデルにより検討した。小1時点の協調共感性が小2時点の地域活動参加への積極性を高め、その高さが小3時点の協調共感性を高める結果が示され、子どもの協働性がソーシャル・キャピタルの形成を促し、その環境が協働性の維持や発達に関わる循環的なメカニズムが示された。今年度は幼児期からの縦断データを使用し国内学会で発表を行った。対象児が年中と年長時点のデータを用いて、問題行動と親による権威的養育や家族の地域交流などとの因果関係を見た研究では、先行する多動・不注意の高さが後の権威的養育を有意に低めること、先行する多動・不注意の高さが地域交流の活発さを低めると同時に、先行する地域交流の活発さが多動・不注意を低める可能性を示唆した。就学移行期における子どもの学校適応を含めたQOLの変化に関わる要因の検討では、年長時点での親の自尊感情や子どもの主体性を尊重する態度が、小1時点のQOLの高さに関わる結果を示し、学術論文として採択された。また、年中児が大人に約束事を反故にされた場合の対応とその個人差に関わる要因についても検討し、学術誌に投稿中である。
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