研究課題/領域番号 |
16K04311
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
田口 雅徳 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (00360313)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 描線動作 / 図形 / 漢字圏 / 中国 / 台湾 / 日本 / 比較文化 |
研究実績の概要 |
本研究では漢字圏(とくに日本、中国、台湾)の児童・大学生を対象として円や三角形などの幾何学図形の一筆描き課題を実施し、描き始めの位置や描く方向にみられる特徴を検討することを目的とした。2017年度における当初の計画では、台湾の大学生の実験データを分析すること、つぎに各国の児童を対象として図形の一筆描き課題を実施し、データ収集をおこなうことを予定した。 台湾の大学生のデータ(右利き32名のデータ)については、日本および中国の大学生のデータと合わせて分析をおこなった。円描画課題では、描き始めの位置を時計の文字盤をもとにして12の点に分類し、描く方向は時計回りと反時計回りに分類した。その結果、台湾の大学生では円の左下(6~7時)から時計回りに描く反応がやや多いこと、また描き始めの位置を11~12時にとる反応が多く、さらにその位置(11~12時)から描き始めると時計回りに描く反応と反時計回り描く反応とに二分されることが示された。このように、台湾の大学生の円の描き方は、日本や中国の大学生の円の描き方に類似していた。つぎに、三角形描画課題では、描き始めの位置を三角形の各頂点に分類し、描く方向を時計回りと反時計回りに分類した。その結果、台湾の大学生では大半が三角形の上の頂点から反時計回りに描いており、こうした描線動作の特徴は、日本や中国の大学生にも多くみられるものであった。以上の結果から日本および中国語圏の大学生では、図形の一筆描きにおける描線動作に共通の特徴がみられることが示された。 つぎに児童のデータについては、台湾での調査により小学2年生10名からデータを収集している。また、日本の児童についてはこれまでに一定数のデータを収集している。ただし、これらのデータの分析はまだ終了していない。今後、中国語圏の児童のデータをさらに収集し、分析を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
台湾の大学生のデータ(右利きの被験者32名を対象)については、当初の計画どおりに、分析をおこない、日本および中国の大学生と比較して結果をまとめることができた。その結果は、2017年9月の日本心理学会81回大会および同年10月の日本教育心理学会59回大会にて報告された。大学生のデータ収集、分析、結果のまとめなどは計画どおりに進んだといえる。 いっぽう、児童を対象とした描画データの収集は、日本および台湾において実施してきた。これまでのところ、日本の児童の描画データは一定数を収集しており、また、2017年9月には台北市近郊で台湾の児童を対象とした調査をおこない、10名のデータを得ることができた。しかし、2018年3月に実施予定であった台湾での2回目の調査が、台湾で発生した地震などにより延期となってしまった。そのため、台湾の児童を対象とした描画データの収集が遅れることとなった。今後、中国語圏の児童を対象としたデータの収集に関し、計画の見直しが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、中国語圏の児童を対象としたデータが不足している。そのため、大学生や日本の児童のデータと比較・検討するまでには至っていない。そこで、2018年度では主に中国語圏の児童を対象に実験をおこない、データの収集を進めていく。対象児の年齢範囲は、日本の小学1~2年生(6~8歳)に相当する範囲とし、各学年とも20~30名のデータを収集する計画である。2017年度でのデータ収集がやや遅れているため、2018年度ではデータ収集の効率を図るよう、中国語圏のなかでも台湾の児童に焦点を絞り、調査を進めていくこととした。データの収集をおこなうにあたっては、交通の利便性がよい台北市近郊の小学校に協力を依頼し、おもに4~7月にかけて複数回にわたり調査を実施する。 また、2018年9月以降には、収集した日本および中国語圏の大学生・児童のデータを比較・検討し、日本および中国語圏にみられる描線動作の特徴についてまとめていく。同時に、これらの分析で明らかになった結果を研究成果として各学会で報告していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2017年度における当初の計画では、2018年2~3月にかけて台湾で調査をする予定であった。しかし、調査の日程調整が難しかったこと、台湾東部での強い地震が発生したことなどの理由により、当該期間において台湾での調査が実施できなくなった。そのため、旅費や調査に関わる経費を次年度に繰り越す結果となった。 (使用計画)2018年度では、延期されている台湾での調査を4~7月にかけて実施する計画である。台湾での調査には旅費および調査で補助を依頼するための人件費が必要となる。そこで、これらの経費に2017年度からの繰越金を使用する予定でいる。また、得られたデータの入力・分析にあたっては人件費およびその他経費が必要であり、これらの経費にも繰越金を使用する予定である。
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