研究課題/領域番号 |
16K04316
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
中川 佳子 都留文科大学, 文学部, 教授 (50389821)
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研究分担者 |
政岡 ゆり 昭和大学, 医学部, 講師 (70398692)
小山 高正 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (20143703)
堀川 浩之 昭和大学, 教養部, 教授 (50255866)
山内 里紗 昭和大学, 教養部, 講師 (50773363)
鈴木 久義 昭和大学, 保健医療学部, 准教授 (70300077)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発達障害 / 自閉症スペクトラム障害 / ADHD / コミュニケーション障害 / 言語能力 |
研究実績の概要 |
コミュニケーションの発達は、感覚運動や協調運動、情緒や対人関係の発達と関係していると考えられている。そこで、発達障害者における対人的コミュニケーションと社会的相互作用の障害の基盤を検討するため、自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠如/多動性障害(ADHD)、定型発達者を対象に呼吸と情動、動作姿勢、嗅覚認知能力を評価し、それぞれの能力と障害の特質、言語的コミュニケーション能力、知的能力の関係を検討した。 言語的コミュニケーション能力を測定するため、J.COSS日本語理解テストをもちいて、発達障害群の日本語理解力を調査した。その結果、ASD群では平均通過項目数が18.27/20項目、ADHD群では17.32/20項目であった。J.COSS日本語理解テストの通過項目数は発達水準に応じて、第7水準(全問正解)、第6水準(18~19項目通過:小学3~6年)、第5水準(12~17項目通過:小学1~2年後半)、第4水準(11項目以下の通過:小学1~2年以下)に分かれている。そこで、両群の各発達水準の人数についてχ2検定を行ったところ、χ2(3)=10.66, p<.05で両群間有意な差が示され、ADHD群は第7水準と第4水準の人数が多かった。また、誤反応を分析した結果、項目内の4種類の問題のうち1問題のみ誤っている対象者が多かった。一方、ASD群ではこのような傾向は示されず、定型発達者と同様の傾向であった。次に、J.COSS通過項目数と知的能力との相関係数を求めたところ、ASD群ではVIQ:r=.336、PIQ:r=.338、FIQ:r=.402とあまり高い相関係数ではなかったが、ADHD群ではVIQ:r=.541、PIQ:r=.706、FIQ:r=.685と高い相関係数が示された。ASDにおけるコミュニケーションの問題は日本語理解力以外の要因も影響している可能性があると考えらる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が所属する大学を異動したため、新たに研究倫理申請や研究実施計画の作成を行ったために、当初予定よりも調査実験の実施時期が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
発達障害者における対人的コミュニケーション障害と社会的相互作用の障害の基盤を検討するため、ASD とADHDの発達障害者、ならびに、定型発達者を対象に呼吸(心拍数・呼吸数)と情動状態(状態‐特性不安)、動作姿勢(バランス能力;開眼閉眼片足立位秒数・静的動的バランス)、運動能力(新体力テスト)を評価し、障害の特質や言語性コミュニケーション能力(知的能力・日本語理解力)、対人コミュニケーショ障害(AQ)と呼吸・情動・動作姿勢・運動能力の関係を検討する。また、動作時の姿勢を三次元で数量的に評価し、定型発達者と運動能力の高低により、動作姿勢のどのような領域の運動が特異的かを検討する。 発達障害者ならびに統制群の心理的評価として、言語コミュニケーション能力(日本語理解力テスト)と情動状態(新版STAI状態‐特性不安検査)を評価する。また、生理的評価として、呼吸(心拍数と呼吸数)、動作姿勢(Functional Test:開眼閉眼片足立位秒数など18 項目)を測定する。さらに、協力者の腰部背面と背中に10チャンネル小型無線モーションレコーダを装着し、動作姿勢測定時の振動・加速度・角速度を計測し、身体の動きを三次元空間で評価する。心理的評価と生理的評価の結果ならびに、附属病院ディケアで実施した知能検査とAQテスト、PARS、SCQ対人コミュニケーション質問紙、SRS対人応答性尺度、コミュニケーション技能アンケート、社会機能評価尺度の結果を収集し、障害の特質や情動状態、言語コミュニケーション能力、呼吸、動作姿勢、運動能力、知的能力、対人コミュニケーション能力の関係を検討する。現在、発達障害者群36名、統制群50名の調査を実施した。29年度中には両群100名の調査を実施し、結果をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が所属する大学を異動したため、新たに研究倫理申請や研究実施計画の作成を行ったために、当初予定よりも調査実験の実施時期が遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として、多数の被験者に同時に実験を行うために、追加で実験機材や装置を購入する(香りの実験機材(T&Tオルファクトメーター:\200,000)と実験装置(Microstone10チャンネル小型無線モーションレコーダ\100,000×2台=\200,000)。旅費として、国際学会参加発表のための海外出張費(\300,000)とデータ収集ならびに国内学会参加のための国内出張費(\300,000)。人件費・謝金として、研究協力者に対する謝金(QUOCard\1,000×200名=\200,000)。データ分析者への謝金(\300,000)。その他として、実験用PCや接続用周辺機器などの消耗品購入費(\450,000)
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