研究課題/領域番号 |
16K04321
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
山本 睦 (夏堀睦) 常葉大学, 保育学部, 教授 (60434536)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保育者のキャリア発達 / 再就職 / 保育施設の就業継続 / 質的データ / 保育者のマネジメント / 潜在保育者 |
研究実績の概要 |
本年度は2回の英国調査を実施し,保育職以外の再就職経験者6名,養成課程に在籍する再就職希望者13名,保育職への再就職経験者3名,離職者2名のインタビューデータを得た。国内調査では,就職8,7,6年目の卒業生を対象に協力者を募り,保育職への再就職経験者4名,離職者5名のインタビューデータを得た。インタビューは半構造化面接で①学校卒業後のキャリア,②再就職のモティベーション,③再就職決断に当たっての優先事項,④再就職のために準備したことの4項目を中心に質問した。この2年間で分析対象59名+管理職5名の調査協力者によるインタビューが実施できた。 また中間分析を実施し次の学会発表を行った。保育職再就職者,非保育職再就職者,保育職再就職志望者,離職者・潜在保育者を日英それぞれに対象グループとして分類した上で,上記②,③の回答を「仕事(Work)」と共起する言葉の感性分析を実施,各対象グループの特徴を抽出した。 1)日本保育学会第70回大会 自主シンポジウム「保育者の離職および再就職における経験のプロセス」話題提供「保育職の再就職促進要因の日英比較」 2)日本応用心理学会第84回大会 個人発表「保育者の再就職における意思決定過程の分析 ―他業種との比較を通じて―」3)2018年6月開催のICAP(国際応用心理学会)での口頭発表にsubmitされた(発表タイトル:The Motivation for and Priority of Work in EY worker’s Re-employment: A Comparative Study between Japan and England)。 更に今後の考察のために就業継続に関わるマネジメント力の日英比較文献調査を実施し,学内紀要に掲載した(「保育施設の管理職に求められるマネジメント力の日英比較」常葉大学保育学部紀要,5,23-34.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
英国調査でsnowballing法で調査協力者を探す予定であったが,2つの養成大学と協力体制が整った結果,非常に効率よくデータ収集ができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの日英比較分析から,保育者キャリアの中での大学=養成課程の位置づけの違いと再就職時の何らかの教育投資の有無がキャリア継続に影響を及ぼしている可能性が示唆された。今後英国調査において,養成課程に所属している再就職希望者のケースを増やすとともに,日本の養成課程在籍者にもインタビューを実施し,比較検討する必要があると考えている。また,今回のデータ分析の対象にはならないのだが,イギリスの保育施設管理職にインタビューする機会に恵まれ,保育者のキャリア継続の現状が聞けた。そこから,これまで保育者の退職研究から正規雇用の拡大を退職防止策として提言してきたが,イギリスの施設では管理職以外非正規雇用であるにも関わらず,就業継続がなされているというこれまでの提言と矛盾する実態があった。そこで,今後はより積極的に管理職にもインタビューを実施し,何かの個人的事情で離職期間が多少あったとしても就業継続がスムーズに行われるための組織マネジメントの視点から,再就職促進要因を捉えたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年6月に参加予定の国際学会参加費が2018年2月支払いであったので,当初2017年度の予算に組み込んでいたが,実際に清算できるのは学会終了後で,他の旅費と一括申請及び支払いという学内の処理規則に従った。その結果,597.68カナダドル(\50,851)の学会参加費は2018年度に清算することとなった。残りの\66,143については,当初予定よりインタビュー数が多くなる予定なので,そのテープ起こし追加費用に充当する。
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