高校初年次生の中には構造方略の未発達のために,説明文読解の不振がみられ,学業不振に陥る者が見られる。このため,彼らの自発的な構造方略を使用するための支援が重要になる。本年度は,適性形成型支援として,入学直後の高1(117人)に対して副教科の授業を活用し構造同定課題を実施し,構造方略の形成を促した。具体的には,4月段階で構造方略の使用傾向尺度より下位群と上位群を構成し,その後,9週間の構造同定課題を実施した。介入期間中の構造方略の形成により向上低群と向上高群に分け,これを組み込んで分析を進めた。以下の3点の結果が示された。 第1に,介入前後の変化量を算出し,構造方略使用傾向×9週間向上度×構造方略下位方略(7)の3要因分散分析を行った結果,下位群において9週間向上度の高群が低群より構造方略使用傾向が高まったことが示された。第2に,説明文読解への効果についても同様の分析をしたところ,読解の量的指標である再生文字数と質的指標である再生連得点数で,向上度高群が低群を上回った。第3に,6教科の学業達成に関する平均値を求めて同様の分散分析を行ったところ,下位群において向上高群が向上低群よりも学業成績の評定値が向上した 以上より,9週間の適性形成型支援は構造方略の使用傾向が低い高1に対して構造方略の使用傾向を高め,説明文理解の量的・質的な向上をもたらし,6教科の学業達成を促すことが示された。ここから,9週間の介入期間中に構造同定課題により構造方略の形成を高めることで,介入前に比べて介入後の構造方略の使用傾向が高まり,その結果として説明文読解の増大を介して学業達成を向上させたと考えられる。ここから,入学直後の高1に対する適性形成型支援の効果メカニズムが示され,本年度の研究目標は遂行された。
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