令和元年度は,学習者の眼球運動を変数に加えた実験を行った。結果,誤答が修正されない項目では正答FBに対する眼球の停留時間が大きかった。これにより,誤答FBを用いた学習実践においては,学習者の誤答への注意を促す必要性が示唆された。 また,学会において,前年度に行ったテスト効果と回答形式に関する実験結果を発表した。この実験は,原学習後,初期テストで回答を手書きで記入する条件とキーボードで入力する条件を比較したものであった。結果,事後テストの成績は,いずれの条件も問題と正答を読み直すだけの条件より高かった。ただし,キーボード入力で初期テスト,手書きで事後テストを行った条件は,他の条件より成績が低かった。これにより,教材の形式の検討の必要性が生じた。 更に,オンライン雑誌で,前年度に行った他者の誤答を用いた実験結果を公表した。この実験は,他者が生成した誤答FB(実験上は予め実験者側で用意したもの)の影響を調べたものであった。結果,事後テストの正答率は,他者の誤答FBを呈示した条件と正答を読むだけの統制条件とで差がなかった。つまり,他者の誤答FBには,学習促進効果も毀損効果もなかった。これにより,教室実践を想定したときに付随する,他者の誤答の干渉の懸念が解消された。 いずれの結果も統計的有意差を十分に検出できなかった部分があり,更に精度の高い追試を必要とする。しかし,誤答FB条件の学習促進効果はほぼ一貫して観察され,誤答FBを用いた学習方略の有効性が示唆されたといえる。
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