研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、妊娠期から子どもが成人するまでの親子のデータを多角的に得られている。今回は、生涯発達的観点および家族心理学的観点から、親がもつ子ども観の変遷を明らかにする。子ども観とは、それぞれの人がその人生を生きる中で構築してきた文化的な価値としての子どもに対するイメージであり、親が子育てをする際に影響を与えると同時に、子育てという経験を通して自身のもつ子ども観も変化することが予想される。 今回の分析では、37名の母親および15名の父親が妊娠期、子どもの乳幼児期、小学校入学、および、20歳時点において記入したSCT質問紙をテータとする。SCT、すなわち、文章完成法とは、特定の語幹に続けて直感で文章を完成させる投影法である。私たちのプロジェクトでは、「子ども」等で始まり、「とは・は・が・を・に」といった助詞を選択し、文章を完成させるだけでなく、同じ語幹を複数回回答することによって、記入者の多角的かつ多層的なイメージを捉えようとするものである。今回は「子ども」を語幹とする1,427文を対象として、KH Coder (Ver.3; Higuchi 2016)を用いてテキストマイニングを行った。 まず最頻語については、母親の子ども観では「親」次いで「笑顔」であり、父親の子ども観では「元気」次いで「親」であった。子ども観を尋ねて、親が想起されることについては乳幼児期のデータをKJ法で分析した東海林ら(2008)と類似する結果であり、親と切り離して子どもをイメージすることが難しいことが表れている。一方、今回は父母による相違も見出された。加えて、共起ネットワーク分析からも「鏡」と結びつく語が父母で異なっており、母親の方が父親よりも親役割を強く捉えていることが推測された。なお、この結果については、翌年度国際学会で発表予定である。
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