研究課題/領域番号 |
16K04336
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
本田 真大 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40579140)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 援助要請 / 被援助志向性 / 認知行動療法 / 発達臨床心理学 / 学校心理学 |
研究実績の概要 |
援助要請研究において研究対象となるものには援助要請の過少性(自己解決できなくても援助要請しない),過剰性(自己解決可能でも援助要請する),機能性(援助要請行動の結果が望ましい)があり,先行研究では過少性が,申請者のこれまでの研究では機能性が主に研究されてきた。しかし,過剰性に関する研究は非常に少ない。そこで本研究課題では,過剰な援助要請行動の実態把握(研究1),関連要因の検討(研究2)を行い,最適化をめざした介入を行う(研究3,4)ことを目的としている。 今年度の研究の目的は援助要請行動の過剰性の実態把握である(研究1)。中学生~成人(有職者の59歳まで)1442名を対象にオンライン調査を実施し,援助要請行動の実態把握の項目(本研究で作成),援助要請スタイル,被援助志向性,知覚された自立性への欲求,を測定した。分析の結果,以下の点が明らかになった。第一に実態として,悩みを抱えなかった人を除くと若者(中学生~大学生)の過剰な援助要請行動の経験率は7.84~15.82%,成人は12.35~14.00%であった。また,援助要請スタイル尺度の「過剰型」得点は若者の方が成人より高く,男性より女性の方が高かった。過少な援助要請行動の経験率は,若者は23.96~32.35%,成人は28.69~33.04%であり,過剰な援助要請行動の実態は過少な援助要請行動よりも少ないことが明らかになった。第二に,共分散構造分析の結果,援助要請スタイル尺度の「過剰型」には被援助志向性と知覚された自立性への欲求が関連していることが明らかになった。 今年度の研究により,過剰な援助要請行動の実態が明らかになった。また若者の方が実態として多いことが明らかになったため,介入を行うのであれば成人よりも若者の方で対象として適切であると思われる。さらに,過剰な援助要請行動の関連要因が本研究より一部明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた研究1,すなわちオンライン調査による援助要請行動の過剰性の実態把握を行うにとどまらず,過剰な援助要請行動の関連要因を一部明らかにすることができた。これは次年度に予定していた研究2の内容であり,当初の計画以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた研究2で使用予定であった関連要因のうち,被援助志向性と知覚された自立性への欲求は既に研究1とあわせて検討できた。そのため,研究2では別の関連要因をいくつか含めて,中学生,高校生,大学生を対象に質問紙調査を実施し,過剰な援助要請行動の関連要因を明らかにするとともに,発達段階ごとの関連要因の特徴を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定よりも主に物品費が低額になった。その理由は,新たなPCを購入する予定であったのに対し,所属機関の大学の研究費によって購入することができたため,本研究費によって新たなPCをもう一台を使用する必要性と妥当性がないと判断したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
援助要請・被援助志向性に関する研究が国内で増えていることから,当初予定していたよりも多くの学会にて自らの研究発表と情報収集,研究交流を行う。そのための旅費として使用する。なお,申請者の所属機関がある北海道から他の都府県への学会参加のための移動には航空機を利用し,かつ前泊,後泊が必要なことが多く,旅費が比較的高額になることが見込まれる。また,今年度の研究2を実施するにあたって質問紙の入力(約1000部)を大学生に依頼するための謝金として使用する。
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