研究課題/領域番号 |
16K04336
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
本田 真大 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40579140)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 援助要請 / 被援助志向性 / 援助要請に焦点を当てたカウンセリング / 認知行動療法 / 発達臨床心理学 / 学校心理学 |
研究実績の概要 |
援助要請研究の研究対象である過少性(自己解決できなくても援助要請しない),過剰性(自己解決可能でも援助要請する),機能性(援助要請行動の結果が望ましい)のうち,先行研究では過少性が,申請者のこれまでの研究では機能性が主に研究されてきた。本研究課題は先行研究が少ない過剰性に関する研究である。過剰な援助要請行動の実態把握(研究1),関連要因の検討(研究2)を行い,最適化をめざした介入を行う(研究3,研究4)ことを目的としている。 前年度までの研究で,過剰性を抑制するためには援助要請スキルと感情調整を高めることが有効であると示唆された。今年度の研究(研究3)では新たな介入法を開発する必要性があるかを検証するために,既存の予防介入の副次的効果として援助要請スキルや感情調整能力が促進されうるかを検証した。 高校2校の1年生122名の質問紙調査の結果より,過剰性負の関連が得られたのは,複数のソーシャルスキル(上手な聴き方スキル,あたたかい言葉かけスキル,主張性スキル,ソーシャルサポート提供スキル,援助要請スキル)の影響を考慮しても援助要請スキルと感情調整能力であった。 さらに,高校2校で「上手な聴き方スキル」「あたたかい言葉かけスキル」「上手な伝え方スキル」を含めたソーシャルスキル教育を行った(A高校1年生には50分×4回,B高校1年生には50分×8回)。その結果,A高校では「上手な伝え方スキル」のみが向上し,B高校では「上手な聴き方スキル」の向上と過剰性の低下が認められた。いずれの高校でも「感情調整能力」と「援助要請スキル」は変化しなかったことから,これら2つを取り入れた介入を実施し効果を検証する必要があると判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究3では開発する介入法の試行版を作成し実施する予定であったが,既存の介入で既に十分な効果が得られているかどうか(例えば,ソーシャルスキル教育の副次的効果として援助要請スタイルや感情調整能力にどのような影響があるのか)は検証されていなかったた。そこで新規の介入法を開発する前にその必要性を実証研究を基に検証する計画に切り替えた。この計画変更は,計画として後退したものではなく,むしろ新規の介入法の開発に当たって慎重に研究を進めるための計画変更(介入法開発の必要性の検討)である。そして,新たな介入法(50分×2回,感情コントロールスキルを用いながら援助要請スキルを使用するプログラム)は既に作成済みであり,最終年度である4年目に新たな介入法を実施できる状態にある。したがっておおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた研究3,4(援助要請の過剰性の最適化プログラムの作成と効果検証)を行う。介入法としては50分×2回を標準とした感情コントロールスキルと援助要請スキルを組み合わせたプログラムを既に作成済みであり,それを実施して効果を検証する。介入対象者はこれまでの研究成果を踏まえて,中学生~大学生のいずれかまたは複数に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していたほど人件費・謝金が発生しなかった。これは質問紙入力等を依頼した際の人件費を想定していたが,1年目の時点からweb調査や研究代表者自身で入力をしたことなどにより節約できた部分が大きい。また,介入研究の準備と実施に時間を要した影響等により,学会参加を控えざるを得なかった。そのため旅費もあまり使用しなかった。これらが次年度使用額が生じた主な理由である。 今後の使用計画として,これまでの研究成果を積極的に学会発表し援助要請の過剰性という本研究のテーマを広く発表するための旅費として使用する。
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