研究実績の概要 |
認知傾向と不眠の関連に関する調査研究行った。不眠の改善効果が報告されている自律訓練法や自律訓練法との類似性が認められる治療法によって得られる認知傾向を取り上げて、それぞれの認知傾向間の関連と不眠との関連について,大学生を対象に検討した。 各種認知傾向を測定する尺度は,アテネ不眠尺度(AIS),脱中心化(EQ),日本語版Five Facet Mindfulness Questionnaire(FFMQ),Acceptance and Action Questionnaire-Ⅱ(AAQ-Ⅱ),日常的フォーカシング態度尺度(DFMS),自律訓練法の臨床効果尺度(ATCES)を用いた。 その結果,まず各認知尺度の下位因子間の相関を求めたところ,一部を除きおおむね正の相関が見られた。このことから各認知傾向がおおむね類似した特徴を持っていることが示されたが,一部ではその概念特有の傾向も見られた。また,不眠症状と各認知傾向との間にはおおむね負の相関がみられたものの,脱中心化とは有意な相関関係は見られなかった。次に、各認知傾向が自律訓練法の効果(ATCES)に与える影響を共分散構造分析によって検討した。有意でないパスを除いた結果,脱中心化とFFMQ,およびAAQが自律訓練法の効果に正の影響を与えることが示された。一方でDFMSはATCESには影響を与えなかった。以上のことから,認知行動療法における脱中心化やマインドフルネス,ACTの心理的柔軟性などの認知傾向が,自律訓練法の習得に伴う効果に正の影響を与えることが示された。 これらの結果から,各心理療法に関する認知傾向の共通性や個別性,不眠との関連が明らかになるとともに,それらの認知傾向が自律訓練法の習得ともなう効果に正の影響を与えることが明らかとなった。
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