研究課題/領域番号 |
16K04340
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
杉江 征 筑波大学, 人間系, 教授 (70222049)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 自律訓練法 / 認知傾向 / 効果 |
研究実績の概要 |
研究1では、昨年度の成果を踏まえ,本年度は自律訓練法による介入によって諸心理療法に関連する認知傾向が実際に変容するかどうかについて、大学生・大学院生7名を対象に検討を行った。その結果、マインドフルネスや脱中心化といった認知傾向が,自律訓練法を練習することによって変容することが示された。本研究は対象人数こそ少なく,結果の解釈は慎重になる必要があるが,自律訓練法の習得によって,あるがままに物事を捉え,判断せず描写することといった傾向が高まることを示すことができた。これまで提唱されてきた不安やストレス低減,不眠の解消といった自律訓練法の主要な効果の背景には,このような認知傾向の変容があったと推察された。本研究では,身体症状や特定の疾患などを抱えていない健常者での介入であったが,今後臨床群を対象に本研究と同様の検討を行う予定である。 研究2では、自律訓練法の日常生活全般への介入効果を検討するために、復職支援の一環として行われている集団自律訓練法の参加者10名を対象として半構造化面接によるインタビュー調査を行った。調査内容は自律訓練法を習得する前の状況や習得したことによる変化や効果についてであった。主な分析は、共起ネットワーク分析(KH Coder)を用いて行った。その結果、「ATを習得する前の状況については」,「緊張」や「不安」といった精神状態や,「肩こり」や「睡眠」といった身体症状に関する単語が多く,かつ関連も見られた。次に「自律訓練法を習得している最中の変化や効果」については,「自律」「訓練」「リラックス」「状態」との間に強い関連が示され,自律訓練法の習得に伴いリラックス効果が得られていたことが質的に示された。また,「効果」「ストレス」「デイ」「対人」「関係」「緊張」との間に強い関連が示されており,リラックス効果だけでなく,対人緊張や対人関係にも変容が見られたことが推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29年度中に、不眠症状のある被験者を対象として認知傾向と不眠の関係を調査し分析を完了する予定であったが、WEB調査の手配等に時間がかかり、年度内に調査は完了したが現在その分析を行っているところである。また、自律訓練法の効果を予測するような尺度の項目案を作成する予定であったが、現在も引き続き作成しているところであり、当初の計画より若干遅れてしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
不眠と認知傾向及び自律訓練法との関係に関する調査はほぼ終了したため、今後は、これらの成果を踏まえた自律訓練法の効果尺度(主に受動的注意集中)を完成させるとともに、高齢者の不眠に関する介入研究を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) インタビュー調査の参加人数が予定より少なかったためテープ起こしの費用が予定よりも少なかったことと、調査研究の一つがまだ完了していないこと、さらに、関連した研究を実施している施設への視察が、日程的な関係で次年度に行うこととなったため次年度使用額が生じた。 (使用計画) インタビュー調査については、次年度も随時実施する予定である。また、調査に関しては、次年度早々に実施する予定である。視察に関しては、次年度視察先の効果研究の目途が立つ予定であるので、先方と調整出来次第行う予定である。
|