研究実績の概要 |
高齢者における諸認知傾向と不眠に関する調査及び自律訓練法の講習による不眠の改善や認知傾向の変化について検討を行った。 まず,認知傾向と不眠との関連について調査を行った。対象は,一般成人(30代~60代)の健常者と不眠症状のある方(定期的通院の有無も)。用いた尺度は, 自律訓練法の臨床効果尺度(ATCES),脱中心化,日本語版Five Facet Mindfulness Questionnaire(FFMQ),Acceptance and Action Questionnaire-Ⅱ,日常的フォーカシング態度尺度(DFMS),ピッツバーク睡眠質問票,アテネ不眠尺度(AIS)であった。結果は,不眠症状の程度と有無での検討で,DFMSの3因子を除く全て尺度得点で有意な差が認められ不眠との関係が示されたが,年齢の要因(高齢者65歳以上,非高齢者65歳未満)を加えると,年齢による違いが多くの尺度で示され,「脱中心化」やFFMQの「非判断」以外,およびDFMSでは不眠との有意な関係は認められなかった。 一方,自律訓練法の講習は以下の方法で実施した。参加者は健常者12名(平均62.3歳,SD=4.2)。講習は7週間の間に6回(一回90分)。上述の尺度については講習の前後で実施した。その結果,講習の前後で有意な変化が認められた変数はFFMQの「観察」とDFMSの「自己感覚距離」であった。また,ATCESの「過敏性」とAISにおいて有意傾向が認められた。不眠得点はもともと低い方々であったが,さらに改善される傾向が認められた。巻き込まれずに距離を取って観察するような態度に関する変数が変化を示したが,これらは自律訓練法の「受動的注意集中」の態度でもある。講習期間や内容,習得の度合いによっても効果の現れる変数も異なってくると思われた。今後は,臨床群での検討やより長期的な検討が必要である。
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