研究課題/領域番号 |
16K04341
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤生 英行 筑波大学, 人間系, 教授 (40251003)
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研究分担者 |
宮道 力 岡山大学, 岡山大学東京オフィス, 准教授 (20627822) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カウンセリング・スキル / カウンセラー / クライエント / 意図 / 反応 / 有益性 / 発言回数 / 自動逐語録作成 |
研究実績の概要 |
収集データの分析について:これまで収集されたデータの個人情報をマスキングし,逐語録を完成させた。資格と経験を有するものによるスキルの特定,および多重評定による評定者間信頼性を確認した。これらの手続きを経て,今年度はデータの分析と各学会での成果の公表を行った。日本心理学会第84回大会では,関連内容のシンポジウムの開催,およびカウンセラー(Co.)がクライエント(Cl.)に提示したカウンセリング・スキルのCo.とCl.の有益性評価(1-9点)を従属変数として,各スキルを独立変数とした一要因分散分析で検討した。その結果,他のスキルに比べて,いずれもRestatementと,Reflection of Feelingsの有益性が高かったことを発表した。日本発達心理学会第32回大会では,日本のカウンセリング・スキルとCl.の反応との関連を検討し発表した。Closed QuestionもCl.に肯定的な反応を引き起こすことが明らかになった。これは,今回の分析対象である逐語録においては,非言語情報が落ちていることから生じたものではないかと考察された。 さらにこれから開催される学会でも発表予定である。2021年7月に開催される予定の,ICP2020+では日本におけるカウンセリング・スキル,Co.の意図,Cl.の有益性評価間の関係について発表する予定である。2021年8月に開催される日本心理臨床学会第40回大会では,日本におけるカウンセリング訓練の効果として,訓練前後のCo.発言回数の変化,訓練前後のクライエントの有益性の変化を報告する予定である。いずれも採択されている。 AIを用いた逐語録作成プログラムについて:住友電工先端技術からの受託研究・共同研究を開始し,AIを用いた逐語作成プログラムの開発とカウンセリング訓練への効果について研究を開始予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症のパンデミックにより,この研究で必須となる対面でのカウンセリング・コミュニケーションが制限される状況である。データを新たに取る場合,現時点で可能なのは,対面ではなく,zoomなどインターネットを介したコミュニケーションの分析となる。これは,今回の日本発達心理学会第32回大会で発表したように,コミュニケーションを逐語録を作成し文章化した場合,微妙なニュアンスを伝える非言語情報が欠けてしまうことになる。このため,今年度はデータを収集することをやむをえず断念して,次年度2021年度に延期することになった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染症流行の収まりを待つことが第1選択である。しかしながら,コロナ感染症の流行様子を見て,非言語情報が落ちて不完全であるがzoomなどインターネットを介したカウンセリング・コミュニケーションの分析を行うことも選択肢の中に入れることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
Pragueで行われる予定の2021年7月にICP2020+で口頭発表予定である。また,コロナ感染症の流行で本年度実施予定が2021年に延期された,対面でのカウンセリング・コミュニケーションのデータの収集,および逐語録作成プログラムによるカウンセリング訓練の研究を行うための予算として残す必要があった。
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