研究課題
強迫性障害(Obsessive-compulsive disorder: OCD)の治療は、セロトニン再取り込み阻害薬を中心とした薬物療法と曝露反応妨害法を中心とした認知行動療法の併用がエビデンスのある治療法として推奨されている。しかし、自閉症スペクトラム障害(Autistic spectrum disorder: ASD)を持つOCD患者の40%が認知行動療法への抵抗性を示すとされている。OCD患者の実行機能の評価研究では、ASDが併存する群は併存のない群と比して、実行機能に障害が認められることが明らかになっており、この実行機能の障害が治療抵抗性と関連していると考えられる。そこで本研究では、OCDとASDの併存例の実行機能を神経心理検査によって精査し、実行機能に焦点を当てた心理プログラムを開発することを目的とする。ASDでよく見られる、特定の関心ごとに対する強いこだわりや反復行動などにおいては、実行機能の中でも「認知の柔軟性(セットシフティング)の欠如」と「全体統合性(セントラルコヒーランス)の脆弱性」が指摘されている。このASDの反復行動とOCDの儀式的な強迫行為は類似しているが、ASDの二次障害として強迫症状が生じている場合、治療は困難になる場合が多い。簡単な課題を遂行しながら思考過程やスタイルに働きかける認知機能改善療法(Cognitive Remediation Therapy: CRT)は、神経性やせ症に対して開発された治療プログラムであるが、前述の2つの実行機能の向上に焦点を当ており、近年OCD患者にも実施が試みられている。本年度は、実行機能に着目した心理プログラムを4名(男性1名、女性3名)のASDを有するOCD患者に対して実施した。また、介入前後のセットシフティングの評価のためにBrixton Spatial Anticipation TestおよびWisconsin Card Sorting Testを、セントラルコヒーランスの評価にRey-Osterrieth Complex Figure Taskを実施した。
3: やや遅れている
患者のリクルートと実行機能に着目した介入が遅れているため。
研究協力患者のリクルートおよび神経心理検査を継続し、ASDを併存するOCD患者に対し、患者の認知機能に合わせて、実行機能に着目した心理プログラムCBTを組み合わせることにより、より有効な治療プログラムを提供できるよう検討を重ねる。
患者のリクルートと実行機能に着目した介入が遅れているため、次年度使用額が生じた。引き続き患者のリクルートと神経心理検査を行い、神経心理検査の解析と実行機能に着目した認知行動療法プログラムを実施する。認知機能検査実施者の謝金、研究成果を学会で発表するための旅費および学会登録料として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Frontiers in Psychiatry
巻: 9 ページ: 216
10.3389/fpsyt.2018.00216
Current Psychology
巻: - ページ: -
10.1007/s12144-018-9952-1
Journal of Medical Internet Research
巻: 20 ページ: e12091
10.2196/12091
https://www.m.chiba-u.ac.jp/class/rccmd/researcher/research.html