研究課題/領域番号 |
16K04342
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
永岡 麻貴 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任研究員 (40757788)
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研究分担者 |
大島 郁葉 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 講師 (40625472)
平野 好幸 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 教授 (50386843)
中川 彰子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 教授 (70253424)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 強迫症 / 自閉スペクトラム症 / 実行機能 / 認知行動療法 / 認知機能改善療法 |
研究実績の概要 |
強迫症(Obsessive-compulsive disorder: OCD)の治療は、セロトニン再取り込み阻害薬を中心とした薬物療法と曝露反応妨害法を中心とした認知行動療法の併用がエビデンスのある治療法として推奨されている。しかし、自閉スペクトラム症(Autistic spectrum disorder: ASD)を持つOCD患者の40%が認知行動療法への抵抗性を示すとされている。また、OCD患者の実行機能の評価研究では、ASDが併存する群は実行機能に障害が認められることが明らかであることから、実行機能の障害が治療抵抗性と関連していると考えられる。ASDでよく見られる、特定の物事に対する強いこだわりや反復行動は、実行機能の中でも「認知の柔軟性(セットシフティング)の欠如」と「全体統合性(セントラルコヒーレンス)の脆弱性」との関連が指摘されている。このASDの反復行動とOCDの儀式的な強迫行為は類似しているが、ASDの二次障害として強迫症状が生じている場合、治療は困難になる場合が多い。簡単な課題を遂行しながら思考過程やスタイルに働きかける認知機能改善療法は前述の2つの実行機能の向上に焦点を当てていることから、本プログラムのベースに採用した。本年度は昨年度に引き続き、実行機能に着目した心理プログラムを3名(男性2名、女性1名)のASDを有するOCD患者に対し実施し、総計で7名となった。さらに、ASDに対しても3名(男性2名、女性1名)に実施した。また、介入前後のセットシフティングの評価のためにBrixton Spatial Anticipation TestおよびWisconsin Card Sorting Testを、セントラルコヒーレンスの評価にRey-Osterrieth Complex Figure Taskを実施した。また、OCDの認知行動療法に対する治療応答性の予測因子を探索し、自閉スペクトラム傾向と実行機能である可能性を見出した。本結果を英文誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者のリクルートと実行機能に着目した介入が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
強迫症の認知行動療法に対する治療応答性の予測因子に関する論文を出版するとともに、これまでに集積したデータを解析し、認知機能改善療法によるセットシフティングとセントラルコヒーランスへの効果と認知行動療法への反応性を評価し、実行機能に着目した心理プログラムと認知行動療法の組み合わせることが、有効な治療方策となりうるかを検討し報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者のリクルートと実行機能に着目した介入が遅れたため、次年度使用額が生じた。 認知機能改善療法によるセットシフティングとセントラルコヒーランスへの効果と認知行動療法への反応性を評価し、研究成果を学会と論文で発表するための旅費、学会登録料、英文校閲費、論文掲載料として使用する予定である。
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