研究課題/領域番号 |
16K04345
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 美保 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (10549281)
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研究分担者 |
黒田 美保 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 教授 (10536212)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発達障害 / アセスメント / チーム |
研究実績の概要 |
本研究は、発達障害傾向を有することによる生きづらさを感じている成人を対象に、生物・心理・社会モデルに基づいた多面的アセスメントツールを開発するとともに、個人の特徴と援助実態を理解する心理教育プログラムを開発・実装し、必要な援助資源につなぐことを目的として計画された。初年度となる2016年度は、発達障害の特徴を多面的にアセスメントするツール開発を行う計画でスタートした。前年度までに行ってきた事例研究、文献研究から抽出したアセスメントの領域に基づき、項目の選定を行った。その際、既存 のアセスメントツールを精査し、各領域に関係する複数の尺度(AQ、VinellandⅡ、就労チェックシート、RAADSなど)の項目を参考にし、成人の発達障害の多面的アセスメント尺度の仮案を作成した。また、尺度では網羅しきれない情報を得るためのフェイスシートも作成した。尺度開発のために、2016年6~8月に大学生を対象とする予備調査を行った。大学生605名(本学の他、複数校で実施)を対象に、作成した多面的アセスメント尺度案と妥当性を検討する複数の尺度を用いて質問紙調査を行った。因子分析を行い、因子構造を確認し、5因子から成ることを確認した。さらに、2017年3月に本調査を行った。成人2,000名を対象にインターネット調査を行い、多面的アセスメント尺度と関連性が予測される尺度を用いて量的調査を行った。これによって得られたデータについて分析を進めている。さらに、明確な発達障害というより、発達障害のグレーゾーンを弁別する尺度とするために、発達障害傾向の強い人を対象とした調査を行うべく、関係諸機関への交渉と調整を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた研究はすべて実施できている。調査を行う中で、更に発達障害傾向をより強く持つ人との弁別能力を持った尺度とするため、追加で調査を進めることとしたため、それにより今後のスケジュールには多少遅延の影響が出る可能性はある。ただし、当初予定した調査は完了しており、より発展的に研究を追加している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずは2016年度に研究1で実施したインターネット調査とこれから実施する発達障害者を対象とする調査の分析を行う。そのうえで、研究2として、研究1で作成した多面的アセスメント尺度を用いた心理教育プログラムの開発を行う予定である。心理教育プログラムは、まずは一般の発達障害特性の理解のためのプログラム(プログラム①)を開発する。次に、個別の発達障害傾向を理解するためのプログラム部分を開発する。その際、研究1で開発したアセスメントツールによる自己理解を主眼とするプログラム(プログラム②)とする。プログラム①と②を一連のプログラムとして構成した心理教育プログラムとを開発する。その後、心理教育プログラムの実装するとともに効果評価を行い、プログラムをさらに精緻化する。最後に、プログラム参加者に対してフォローアップ調査を行い、プログラム参加者を対象に援助機関の使用状況や機関同士の連携状況について、プログラム参加者(70名)、連携機関の担当者(7回×2名)を対象に、質問紙及び面接調査によるフォローアップ調査を行う。最後に、随時結果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
インターネット調査費用が予想を下回ったことが大きな要因である。インターネット調査については、尺度の精緻化を行う予定であったが、尺度がどのくらいの項目になるかは実際に尺度を作成してみないとわからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、追加で発達障害傾向の強い人を対象とした調査を計画中であり、その実施に際して、協力謝金と調査実施費用、データ入力の謝金などが発生するため、その費用として活用する予定である。
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