研究課題/領域番号 |
16K04345
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 美保 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (10549281)
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研究分担者 |
黒田 美保 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (10536212)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発達障害 / アセスメント / チーム |
研究実績の概要 |
本研究は、発達障害傾向を有することによる生きづらさを感じている成人を対象に、生物・心理・社会モデルに基づいた多面的アセスメントツールを開発するとともに、個人の特徴と援助の必要性を理解する心理教育プログラムを開発・実装し、必要な援助資源につなぐことを目的として計画された。今年度は、初年度に行った多面的アセスメントツールの開発をさらに推し進め、発達障害傾向をより強く持つ人との弁別可能性を検討するために、発達障害者支援センターの協力を得てデータを追加した。昨年度実施したインターネット調査の結果も合わせて分析を行い、尺度を完成した。完成した尺度は、日本発達心理学会でポスター発表を行い、多くの研究者と意見交換を行った。さらに、多面的アセスメントツールの援助現場での活用可能性や、それを用いた心理教育プログラム開発の在り方について、発達障害センターのスタッフにグループインタビューを実施した。その意見をもとに、心理教育プログラム開発に向けて協力研究者で会議を行った。そこで検討した方向性に基づき、発達障害傾向のある人の支援に携わっている複数の領域の専門家を訪問し、プログラムの実施可能性や意義などについて意見交換を行った。そこで得られた知見から、発達障害傾向を持つ支援の実態は、地域性が大きくかかわる可能性があると考えられたため、本研究で開発する心理教育プログラムは本学の所在地でもある文京区をフィールドとした文京区モデルを開発することとした。そのため、まずは文京区で実際に支援を行っている多領域の専門家を訪問して意見交換を行うとともに、医療、福祉、就労、生活に加え、発達障害全般の理解、発達障害の支援そのものの重なりをテーマに6回にわたる講演会を実施した。今後、そのデータを元にプログラムのコンテンツを開発する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、2016年度に研究1として取り組んでいた多面的アセスメントツールについて精緻化を行う予定であったが、それについては予定通り実行することができた。さらに、完成したツールについては予定通り成果を公表することができた。また、2017年度に着手を予定していた心理教育プログラムについて専門家と意見交換を行う中で、文京区モデルを開発するという当初の予定にはなかった変更も加わったが、これは積極的な変更でもあり、地元に密着した地域支援の援助の専門家の講演会を実施し、プログラム開発の素地を築くことができた。文京区モデルへの転換により専門家との打ち合わせが追加されたことに加え、講演会も行うことにしたため、プログラム開発への着手はやや遅れたものの、概ね予定通りの進捗といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、2017年度から行った心理教育プログラムのための講演会のデータを元に、プログラム開発を行う。プログラムは自己理解を促すプログラム①と、地域資源を理解するためのプログラム②から構成されるが、プログラム①では研究1で作成した多面的アセスメントツールを使用し、プログラム②では2017年度に実施した地域の専門家による講演会の内容をコンテンツとして組み込む予定である。プログラムが完成したら、プログラム参加者を募って実装し、効果評価を行う。さらに、当事者の支援を行っている連携機関の担当者を対象にインタビューを行い、アセスメントツールの有効性やプログラム内容についての効果検証を行う。アセスメントツールについては学術雑誌に投稿するとともに、プログラムの成果についても随時公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2017年度は心理教育プログラムの内容の作成まで進める予定であったため、そのための人件費を見込んでいた。しかし、開発に先立ち複数の専門家と意見交換を行う中で、文京区モデルを開発することとなり、改めて文京区の地域援助専門家にを訪問し意見交換を行い、講演会を開催することとした。そのため、プログラムの内容を作成するに至らず、人件費が予定ほどにはかからなかった。 (使用計画)プログラム開発に際し、内容を開発する作成者、プログラムを実装する実施者への謝金を要するため、人権費が掛かる予定である。また、講演内容の記録作成なども必要となる。
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