研究課題
本研究では臨床的に非常に重要である修正感情体験に焦点を当て、実際の臨床面接から修正感情体験の場面を抽出して、そのプロセスを明らかにすることを目的としている。今年度は、以下の4つの作業を行った。一つは、心理療法事例のデータ収集であり、お茶の水女子大学で実施した。面接の録画、インタビュー、質問紙などから包括に修正感情体験にかかわるデータを集めた。この研究では、クライエントの主観的体験、面接プロセスの分析、面接後の質問紙データをもとに修正感情体験とかかわる変容のプロセスを細かに記述し、その必須構成要素を明らかにすることを目的とした。これまで、感情体験および対人プロセスの両方がかかわることを明らかにしている。次に、国外のデータの収集である。感情に焦点を当てた統合的心理療法であるAEDPのデータをAEDP研究所の協力により実施した。今年度で新たに30件以上のケースが集まった。特に初期面接においての修正感情体験についてクライエントの自由記述から明らかにしている。3つめに学会発表である。データの一部は、AEDP研究所の会議などで発表し、その成果は、一部国際大会でも発表している。計7件の論文発表を行った。最後に論文の投稿である。2本の論文を投稿し、そのうち、1本は英語の専門誌に掲載された。もう一本は現在審査中である。本年度の研究成果は、2018年5月と6月に開催される国際大会で発表予定である。また、現在、2件の論文の執筆も続けている。
2: おおむね順調に進展している
研究課題着想当初は、比較的少数の事例に焦点を当てて、分厚い記述と細かなプロセス分析を中心に捉えていた。しかし、AEDP研究所の心理療法データを集められることになったため、より多くのケースのデータが提供され、研究の厚みが増した。本年度は特定事例に関する細かな分析と、AEDPの効果研究データの統計分析の両方を進めていった。また、海外での発表も多く行った。昨年度からノルウェーのModum Bad病院のうつ科でのデータ収集の可能性についても話し合っている。この病院では修正感情体験を最大限に活かす入院治療が行われている。このデータと、これまでに集めてきたデータの比較を行うことによって、さらに研究を意義を高めることができそうである。
本年度は最終年度となる。現在進行中のデータ収集をさらに進めるのが第一の目的である。次に、研究成果の発表である。5月と6月に国際大会での発表を予定している。加えて、論文投稿も視野に入れている。また、Modum Bad病院の協力を得るための打合せも重ねて次の研究へとつないでいきたい。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
Clinical Psychology and Psychotherapy
巻: 25 ページ: 322-337
https://doi.org/10.1002/cpp.2150
https://www.aedpresearch.com