研究課題/領域番号 |
16K04349
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
西山 志満子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 研究員 (70649582)
|
研究分担者 |
鈴木 道雄 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (40236013)
高柳 陽一郎 富山大学, 附属病院, 講師 (40574942)
高橋 努 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (60345577)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 統合失調症 / 自我障害 / MMPI / Ultra High Risk |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は、MMPIの質問項目を用いて自記式の自我障害尺度を開発し、集団での実施を可能にすることである。平成29年度は、Ultra High Risk(UHR)群およびFES(First Episode for Schizophrenia)群のリクルート、UHR、FES、健常群のMMPIの回答のデータ化を行い、各群におけるMMPIの尺度の特徴を調べた。 65例のUHR群、 44例の FES群、および60例の健常群にMMPIを施行し、年齢を共変量としたANCOVA解析を行った.さらに65例のUHR群のうち統合失調症に移行した8例および精神病症状を伴う重症うつ病エピソードに移行した1例をUHR-T群,1年以上の追跡で未発症であった27例をUHR-NT群とし、ベースラインにおける臨床尺度を、健常群、FES群の臨床尺度と比較した. 健常群と比べ、UHR群、FES群で有意に高い尺度は、第1、2、3、4、6、7、8、0尺度であった。UHR群ではFES群と比べ、第6、第8尺度で有意な低下を示した。さらにUHR-T群ではUHR-NT-群と比べて第6、8尺度が有意に高かったが、FES群との間に有意差を認めなかった。またUHR-T群では、UHR-NT群、FES群と比べ第7尺度が有意に高かった。 UHR群の猜疑心や妄想的観念、明晰な思考の低下、奇異な言動などはFES群より低いが、抑うつ、不安、内向性、身体症状などは、FES群に匹敵する程高いことが示唆された。また、後に精神病に移行するUHR群では、前駆期の段階から、すでにFES群と同程度の精神病的特徴を有しており、よい不安が高いことが示唆された。今後は、MMPIの項目を用いて、精神病発症リスクの補助診断に有用な新たな尺度の開発が課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、データ化されたMMPIは健常群で100例、UHR群で65例、FES群で44例である。MMPIは550項目あり、1例ごとのデータ化に当初の想定よりも時間を要した。また、自我障害尺度の作成にあたり、統計に基づく項目の選定、専門家による選定による尺度の精度を比較するなど、尺度の作成方法を再検討したことも当初の予定より進捗がやや遅れた原因と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
MMPIの項目のデータ化については、Excelに計算式を組み込んで回答を入力することで、データ化の効率を改善した。H30年度に自我障害尺度を完成し論文として公表することが目標である。 本研究の第二の目的は、統合失調症を始めとする精神病前駆状態の患者を対象に本尺度および脳構造磁気共鳴画像(MRI)により自我障害に関連する脳構造の評価を行い、その生物学的病態変化を明らかにすることである。本研究についてはH31年度に実施する予定だが、進捗状況によっては最終年度を1年延長することを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
MMPIのデータ化の遅れに伴い、尺度の開発および画像解析研究の進捗に遅れが生じた。MMPIのデータ化の効率を改善することはできたが、次年度は画像解析用のパソコンおよび解析ソフトを購入し、画像解析研究の効率をあげる予定である。
|