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2016 年度 実施状況報告書

周産期から乳幼児期早期の臨床心理学的支援モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 16K04353
研究機関名古屋大学

研究代表者

永田 雅子  名古屋大学, 心の発達支援研究実践センター, 教授 (20467260)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード臨床心理学 / 周産期 / 早期介入
研究実績の概要

本研究は、新生児期および乳児期早期の親と子の関係性の発達を明らかにすることで、周産期~乳幼児期早期の臨床心理学的支援の在り方について明らかにしようとするものである。この目的にそって今年度は以下を実施した。
1.海外で周産期からの母子関係支援のツールとして活用されているNeonatal Behavior Observation(NBO)の日本における応用可能性の検討を行った。今年度は、第一人者であるCampbell氏を招聘し、開発者のNugent氏とともに、国内の関係者と日本における課題及び実施可能性について検討を行った。
2.出産直後から3歳までのフォローアップ研究を、愛知県の産科クリニックと研究協力の体制を整えて開始した。今年度は、新生児期(産科退院前)、および1か月後の母親を対象にして実施した。母親に対しては、産後うつを含めたメンタルヘルスと子どもに対する感情を質問紙で測定し、子ども自身にはNeonatal Behavior Assessment Scale(NBAS)を実施し、反応性や自己統制能力を母親同席のものとで測定した。また出産直後の母子の相互作用の特徴については、周産期看護ケアの専門誌に連載としてその成果を公表した。
3.周産期での臨床心理学的支援の活動について実態調査を行い、原著1本として発表を行うとともに、事例を収集し、多職種との協働の中での心理の専門職の役割について検討をおこなった。その成果を、編著1本としてまとめた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度は、海外で0-3か月の新生児期の早期介入の方法として広く活用されるようになってきているNBOの第一人者をオーストラリアから招聘し、NBO開発者のNugent氏とともに名古屋大学で公開シンポジウムを開催するとともに、日本におけるNBOの活用可能性について内外の研究者と検討を行った。また、現在、周産期医療および乳児期早期の支援の場で活動をしている臨床心理士を対象に、NBOの理論や介入方法が臨床活動にどの程度有用となるのか検討を進めており、赤ちゃんを主体とした介入方法や臨床心理学的支援の在り方について知見の収集を進めた。また新生児期~3歳まで、母親、赤ちゃん、関係性の3つの視点から検討を行うフォローアップ研究では、産科クリニックの協力を得て、出産直後および1か月後のデータの収集を開始した。1例は同意を得て、新生児期~1歳まで継続して親子関係の詳細な観察記録を取得した。順調に研究協力の同意が得られていたが、平成29年4月から厚生労働省が助成事業とした2週間、1か月の産婦検診が開始され、本研究の調査項目であったEPDSが産科医療機関で実施する項目となった。同じ時期に同じ質問票を実施することになったため、協力者の負担を軽減すること、医療機関との連携を強める必要性から、新たにプロトコルを検討しなおしをおこなった。29年度以降は、産後2週間、産後1か月の二時点については検診のデータを利用する形で、収集することに変更した。それに伴い、昨年度1年間と今年度から収集するデータの取得方法に変更を余儀なくされたため、改めて本年度からフォローアップデータの収集を開始する。

今後の研究の推進方策

昨年度招聘をおこなったCampbell氏を平成29年度中に名古屋大学に客員教授として招聘することが正式に決まり、事前の研究打ち合わせをおこなうこと、また海外における周産期から乳幼児期早期の心理学的介入の実際について資料収集を行うことを目的として、オーストラリア訪問を研究計画として追加した。また0歳~3歳までのフォローアップ研究については、研究協力機関での産婦検診の導入により、昨年度までと実施方法を変更せざるを得なくなったため、昨年度のデータは1か月までのフォローアップ研究として分析を行い、3歳までの継続的なフォローアップデータの収集は今年度から新たに開始することとする。今後、10か月以降の継続データを収集するとともに、母子の相互作用の発達の様相を丁寧に分析し、早期の母子の関係性が築かれていくプロセスの検討を行う。また、周産期における臨床心理学的介入のあり方について、内外の知見を収集するとともに、研究成果を第16回世界乳幼児精神保健学会等で発表できるように準備を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

平成28年度に海外からNBOの第一人者であるCampbell氏を招聘して、研究打ち合わせおよび資料収集を行った。その中で、平成29年度に申請者が、Campbell氏の所属する王立小児病院を訪問し、海外での支援の実際の視察および資料収集を行うこととなった。また平成28年度中にCampbell氏を、名古屋大学の客員教授として迎えることが確定し、より連携して本課題をすすめるために、平成28年度予定した経費を抑え、当初予定していなかった海外視察を実施することとした。オーストラリアメルボルンに訪問するにあたり、乳幼児期早期からの発達障害の支援プログラムを開発し、地域と連携して支援を行っているラトロープ大学を視察先に加え、周産期~乳幼児期早期のオーストラリアにおける介入方法について幅広く知見を収集するとともに、今後の研究について打合せを行う。

次年度使用額の使用計画

オーストラリアメルボルンで、王立小児病院の訪問し、周産期~乳幼児期の支援の実際についての資料収集およびCampbell氏との研究打ち合わせを行う。またあわせてラトロープ大学を訪問し、OTRACおよびASELCCの早期介入システムについての資料収集を行う。海外視察および研究打ち合わせのための交通費として使用を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 周産期医療の「場」を支援する―心理的ケアを担う専門スタッフの役割2016

    • 著者名/発表者名
      永田雅子
    • 雑誌名

      日本周産期メンタルへルス学会誌

      巻: 2(1) ページ: 49-54

  • [学会発表] 親になるということ―心のゆらぎと向き合う2017

    • 著者名/発表者名
      永田雅子
    • 学会等名
      第15回日本生殖心理学会
    • 発表場所
      ウィンクあいち(名古屋)
    • 年月日
      2017-02-19 – 2017-02-19
    • 招待講演
  • [学会発表] 周産期医療領域における臨床心理士の活動―多職種の中での協働の在り方をめぐって―2016

    • 著者名/発表者名
      永田雅子
    • 学会等名
      日本心理臨床学会第35回秋季大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-09-04 – 2016-09-07
  • [学会発表] 赤ちゃんとお母さんを支える -周産期~乳幼児期の家族支援2016

    • 著者名/発表者名
      永田雅子
    • 学会等名
      第5回日本タッチケア学会
    • 発表場所
      SYDホール(東京)
    • 年月日
      2016-06-26 – 2016-06-26
    • 招待講演
  • [図書] 妊娠・出産・子育てをめぐるこころのケア2016

    • 著者名/発表者名
      永田雅子編著
    • 総ページ数
      257
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
  • [学会・シンポジウム開催] 子どものレジリエンスを新生児期の支援から考える2016

    • 発表場所
      名古屋大学野依学術記念交流館
    • 年月日
      2016-09-18 – 2016-09-18

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公開日: 2018-01-16  

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