研究課題/領域番号 |
16K04356
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
芦谷 道子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (70452232)
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研究分担者 |
石崎 優子 関西医科大学, 医学部, 准教授 (20411556)
友田 幸一 関西医科大学, 医学部, 学長 (50164041)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 聴覚情報処理障害 / 他覚的聴力検査 / スクリーニング検査 / P300 / 雑音付加語音明瞭度検査 / 小児 / チーム支援 |
研究実績の概要 |
聴力が正常であるにも関わらず、聴き取りに困難の生じる聴覚情報処理障害(APD)に対し、欧米では評価と支援が標準化されているが、わが国ではまだ確立されていない。評価は自覚的なものにとどまり、心因性症状との鑑別が困難なため、他覚的聴力評価の開発が求められている。 そこで、APDに有効な他覚的聴力検査について検討するため、電気生理学的検査の機器開発に取り組んだ。刺激音や雑音を調整できるP300脳波計測システムを開発し、異なる2種の語音を聞き分ける課題を、聴き取りが正常な対象例に試行した。その結果、再現性、信頼性の高いデータを得ることができ、雑音が多くなると刺激音に反応する脳波が消失する結果となった。本検査をAPD児に実施し、より微小な雑音で脳波が消失することを検証できれば、雑音下聴取困難を客観的に測定することに寄与できると考える。 また、昨年度開発したAPDの早期発見に寄与しうる簡易な雑音付加語音スクリーニング検査を、雑音下聴取に困難を抱える臨床群に適用し、設定したカットオフ・ポイントの有効性を検証した。その結果、いずれの対象もカットオフポイント以下の値となり、本スクリーニング検査が臨床群にも適用できることが示唆された。APDは発見が遅れると二次的に学習面、心理社会面に問題をきたすことがあるため、早期発見と支援が必要であり、短時間で集団実施可能な本検査は、スクリーニング検査として有効性が高いと考える。 さらに、一昨年度開設した「小児聴き取り外来」を継続し、聞こえに問題をもつ小児及び保護者を対象とし、耳鼻咽喉科医師、言語聴覚士、臨床心理士による多職種協働のチーム医療による支援を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発したスクリーニング検査については、正常児のデータより得たカットオフポイントの有効性を臨床群においても確認できたが、他覚的聴力検査については、臨床群に実施するに至っていない。 また、共同研究者である小渕らがAPDを評価するAPT(Auditory Processing Test)を大きく改良したが、まだその導入に至っておらず、APDの標準化された検査が行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年延長し、以下の2点を検証する。 ・他覚的聴力検査を臨床群に実施し、雑音下聴力の低下を他覚的に測定することができるかどうか、臨床的な有効性を検証する。 ・小渕らが改良した新しいAPTを導入し、APDを標準的に評価できる体制を整え、開発した他覚的聴力検査、スクリーニング検査との整合性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者の小渕が新しく標準化された聴覚処理障害検査を開発したが、その導入が本年に間に合わなかったため、次年度への研究の持越しが必要となった。また、他覚的検査の開発も遅れたために、まだ患者への適用に至っていない。 次年度には、新たな聴覚情報処理検査を導入し、本研究において開発した雑音下聴取を測定する二種の検査が、聴覚情報処理障害とどのように関連するかを詳細に検討する。また、他覚的検査を患者に適用し、評価の有効性を検討する。
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