研究実績の概要 |
本年度は保護者を対象とした介入プログラム原案作成のため,前回の基盤研究(C)「小学生における無気力感メカニズムと教師介入プログラムの検討」(課題番号25380927)で得られた知見に関する詳細な考察を,国内外の文献研究に基づき行った。その上で,介入理論および方法に関わる国内外の文献研究を行った。
前回の研究知見から,ポジティブ情動を保護者に送信できる子どもそれを受信されている可能性があるが,ネガティブ情動を保護者に送信できる子どもが,必ずしも保護者に聴いてもらえているとは限らない可能性が示唆された。保護者のメタ情動と子どもの情動制御能力(Gottman, Fainsilber, & Hooven, 1996)・子どもの感情に関する会話(Gottman,1997)との関連性が示されていること,また大人はネガティブ感情には否定的であること(大河原,2015)から,子どもがネガティブ情動を表現しても保護者が受けとめられるケースとそうでないケースとがある可能性が考えられた。以上から,主にネガティブ情動に関する保護者介入の必要性が示唆された。
また愛着理論(Hoffman, Marvin, Cooper, &Powell 2006),精神分析(Winnicotto,1959,1963)から,子どもの感情表出への保護者の対応が情動発達に影響することが示唆され,保護者介入の妥当性が確認された。さらに本研究では児童期の感情表出の環境として保護者を想定していることから,「情動表出する機会」(Kennedy-Moore & Watson,1999)への介入と定義された。そして子どもの情動表出の機会を保証するために,保護者の子どもの情動への気づき,子どもの情動の言語化支援,子どもの情動への共感と承認(Gottman, Katz, & Hooven,1997)を促進するプログラムの必要性が確認された。
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