研究課題/領域番号 |
16K04360
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 敦子 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (20542286)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 臨床神経心理学 / アルツハイマー病 / 記憶モニタリング |
研究実績の概要 |
本研究では、アルツハイマー病へ移行する可能性の高い軽度認知障害(mild cognitive impairment、以下MCI)、アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease以下AD)、健常高齢者群を対象として、意味的・語彙的知識に関する想起・記憶モニタリング課題と併せて、日常生活での記憶モニタリングに関する尺度を用いた評価、エピソード記憶とそれに関する記憶モニタリング課題における被験者群間の違い、課題間の違いを評価し、想起に対する記憶モニタリングの正確性について検討する。2017年度は、作成した漢字単語を用いた語彙的知識に関する想起可能性評価課題と想起課題、エピソード記憶に関する想起可能性評価課題と想起課題、神経心理検査、うつ尺度等を、健常高齢者群と学生被験者群に行った。エピソード記憶におけるメタ記憶と実際の想起との相関は、学生群の方が高齢者群よりも高く、語彙的知識に関する記憶のメタ記憶と実際の想起との相関は学生群と高齢者群で変わりがなかった。加齢による影響が記憶のタイプによって異なる可能性が考えられ、エピソード記憶に関するメタ記憶は若年者に比べて高齢者で低下がみられるのかもしれない。また、エピソード記憶において、学生は見積もり数(遅延再生の時いくつ想起できそうか問う)の方が実際の遅延再生数よりも少なかったが、高齢者群は見積もり数の方が遅延再生数よりも多く、若年者は記憶に対する不安が強い可能性があると考えられた。さらに高齢者には見出されなかったうつ尺度とエピソード記憶課題の関連が学生群には見出された。これらの結果を踏まえた上で、MCIやアルツハイマー病でみられる変化について考察できるよう被験者に実施していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度、学生被験者群、健常高齢被験者群を対象としてデータを収集するまでに時間を要した。その結果から課題の選定をもう一度行い、2018年度にはMCI,アルツハイマー病症例を対象として検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、診療のためのMMSEなどの神経心理学的検査、MRI・SPECT検査を行ない、 記憶モニタリング課題と想起課題、それらと合わせてその他の認知課題、精神的健康度に関する質問紙も行う。それらの課題間の関連について健常高齢者群との間に違いがみられるのかを調べる。AD患者に比較してMCIの被験者は少ないと思われるが、できるだけ多くの患者に施行し、群間比較を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度においてデータを収集するまでに時間を要した。そのため、2018年度にはデータ整理、解析に必要な研究補助者への人件費、さらに被験者を増やすことで必要となる謝金、成果発表のための旅費などに用いる予定である。
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