研究課題/領域番号 |
16K04363
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
服巻 豊 広島大学, 教育学研究科, 教授 (60372801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 臨床動作法 / 心理療法 / Self-control |
研究実績の概要 |
研究実施計画のうち,基礎研究として大学生を対象として動作法の効果研究ならびに握力計を用いたSelf-controlに関する実験研究を行った。動作法効果研究としては,自体感尺度(池永,2012)を用い,運動課題教示群と動作法課題教示群に分けて週1回の3週間,計3回の課題前後の比較を行った。同時に,課題前後の安静時の開眼・閉眼時の脳波を測定し,脳科学的検討も行った。その結果,3回の課題セッションにより運動課題教示群も動作法課題教示群においても回数の主効果があり,課題実施回数が増すごとに自体感は高まることが明らかになった。群間比較においては,課題への試行錯誤得点が,動作法課題教示群の方が運動教示群よりも有意に高かった。このことは,動作法課題教示群において動作中にも実験者の教示を続けており,教示に従いながら自分の動作をモニターし,照合しているプロセスが示唆された。また,脳波については,運動課題教示群も動作法課題教示群ともに,開眼・閉眼において運動と関連するβ波,リラックスの指標であるα波,注意・集中の指標であるθ波が高まることが示唆された。これらのことは,運動課題教示においても動作課題教示においてもゆっくりからだを動かすことが求められ,日常生活にない新奇体験であったことが課題への試行錯誤得点以外に群間の差が明確にならなかったことが考えられた。しかし,動作法課題教示群において課題への試行錯誤得点が有意に高かったことは,動作法教示が適切にされていたことを示すものであり,今回の脳波分析は全体脳波であり,部位特定の脳波分析により動作法課題教示群と運動課題教示群との差が明らかになるかも知れない。今後の検討課題である。上記結果は,日本リハビリテイション心理学会にて口頭発表(中川・服巻,2016)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Self-control様式尺度開発ならびにSelf-control指標の作成が遅れている。そのため,疼痛コントロールとSelf-controlの関連についての調査研究の実施ができていないため。また,基礎研究においても動作法効果研究とともに脳波研究も取り入れ,Self-controlのアセスメント法に脳科学的観点を新たに加えたことも平成28年度の遅れに影響している。しかし,このことは後にSelf-controlアセスメントに客観的根拠を示してくれるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究推進方針としては,Self-control様式尺度の開発とともに,慢性疼痛患者のFirst Step Assessment Scale(FSAS)の作成に取り掛かる。同時に基礎研究として大学生を対象とした握力計,心拍計,脳波を用いた実験研究を行い,Self-controlアセスメントのための生理・心理指標の同定を試みる。また,海外共同研究者であるカロリンスカ研究所の吉武尚教授との議論を重ね,Neuroscienceの知見を取り入れた国際展開を考えていく。
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