1年目,2年目,3年目と継続してきた大学生ならびに地域住民を対象とした集団実践研究の成果として,臨床動作法体験後は,体験前より状態不安(STAI-S)の有意な減少が認められ,かつその効果量が大きいことが明らかとなった。また,POMS,POMS2を用いた検討では,臨床動作法体験後に有意な気分安定効果を持つことを明らかにした。実験パラダイムを用いた効果研究では,臨床動作法は,動作課題体験回数を重ねるごとに自体感が高まり,脳波として運動と関連するβ波,リラックスの指標であるα波,注意・集中の指標であるθ波が高まることが示された。また,3年目には,臨床動作法体験の身体感覚ならびに気分状態への影響を同時に測定するため,動作体験尺度,内受容感覚尺度(MAIA)ならびにSTAI-S(あるいはPOMS/POSM2)を用いて検討した。その結果,動作体験尺度とMAIAの有意な正の相関ならびに不安低減効果と身体感覚の賦活化の有意な正の相関が認められた。このことより臨床動作法によるSelf-controlを介した不安低減ならびに気分安定効果は,自体感,内受容感覚,脳波上での身体感覚(β波),リラックス感(α波)という身体感覚の賦活効果ならびに脳波での注意集中(θ波)の高まりにより説明可能であることが明らかになった。慢性疼痛患者への臨床動作法適用事例の臨床的記述の成果とも符合する結果であり,身体的安定と心理的安定とのつながりが臨床動作法におけるSelf-controlを介した心理メカニズムであることが示唆された。本研究では,アセスメント法を確立することはできなかったが,Self-contorlが慢性疼痛患者の疼痛コントロールの効果予測指標となることが明らかとなり,がん性疼痛を含めた慢性疼痛ケアへのSelf-controlを賦活化する臨床動作法ならびに心理学的介入法の有用性を明らかにした。
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