研究課題/領域番号 |
16K04364
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
内野 悌司 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (00294603)
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研究分担者 |
小島 奈々恵 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (20726963)
黄 正国 広島大学, 保健管理センター, 助教 (80735275)
栗田 智未 福井大学, 保健管理センター, 講師 (90467788)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学生相談 / 困っていること / 生き抜く力 |
研究実績の概要 |
研究1年目の平成28年度には、学生の直面している生きづらさに関連する危険因子、苦境を切り抜けるプロセスにおける保護因子、それらの背景や関連を明らかにし、自殺防止のプログラムの狙いを定めることを目的とした。研究の手続きとして、本研究メンバーが直近1年間で行った学生相談98件についてレビューを行い、まず学生の直面している困難な状況や背景、困り感について、個別の具体的内容とその文脈を記述したものをリストアップし、データベースを作成した。つぎに研究メンバーで相談内容に応じて困りごとを11のカテゴリーに分類し、180件の相談内容がそれぞれどのカテゴリーに該当するかメインカテゴリー及びサブカテゴリーに分けて分類した。そして問題に関連すると思われる学生の要因を研究メンバー各自でキーワードにしてデータベースに書き出した。それを後に研究メンバー全員でKJ法を援用した方法によりグルーピング化し、カテゴリーを作成した。 その結果、抽出されたカテゴリーは、「学修問題」「性格」「ソーシャルスキル」「発達課題」「家族問題」「承認」「不適応」「精神疾患」「外傷体験」「LGBT」の10個となった。各カテゴリーにおいて、さらに下位カテゴリーが分類され、たとえば「性格」であれば、「回避・逃避」「完璧主義」「ネガティブ思考」「自己愛」「受動性」などのキーワードとして記述された。こうした下位カテゴリーをe-learningプログラム及びワークショッププログラムを作成する際の働きかけのターゲットにすることが特定された。 こうした結果が、自殺防止や健康増進を目指す心理教育プログラムを構築することに資すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画であった、過去の相談記録をレビューすることによって、学生の直面している困難な状況や困り感、それらに関連する要因や背景を明らかにし、次年度以降に計画しているe-learningプログラム及びワークショッププログラムを作成するための準備がおおむね順調に進んでいると考えられるからである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究計画では、自殺防止の働きかけとして情報提供を通じ、学生が直面している困難を自分自身で対処し軽減することを目標とする問題改善アプローチと苦境において他者や専門相談機関に相談してみようという態度を促すことを目標とする態度変容アプローチの2つの心理教育プログラムを開発することにしている。 1つ目は個人で学習できるようe-Learningプログラムの開発、2つ目は苦境に対処するためのスキルと態度を身につけ定着できるよう集団で演習するワークショップ・プログラムの開発である。E-Learningの開発において、コンピュータープログラミングに精通した人に協力を得ることが課題となっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が平成28年度から29年度にかけ、大学を異動したため、年度末の予算執行が充分行えなかった。平成29年度は予算通りに執行できる見通しである。
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次年度使用額の使用計画 |
心理教育プログラムの開発を予定しており、e-Learningプログラムの開発には経費がかかるため、適正に予算を執行する計画である。
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