本年度は、福岡市(なかにわメンタルクリニックと福岡市自閉症児者親の会高機能部会の協力:7月22日~23日)、愛知県南知多町日間賀島(NPO法人アスペ・エルデの会の協力:8月16日~19日)、下関市(なかなみメンタルクリニックの協力:8月24日~26日)において、計31名の中学生から青年期までの高機能ASDを対象とした短期集中型「自己理解」プログラム(合宿方式)を実施した。同時に、福岡市において、思春期から青年期までの女性高機能ASDを対象としたDay Camp方式の継続的「自己理解」プログラムを3回(延べ27名参加)実施した。 過去2年間の研究成果を受けて、青年期高機能ASDでは、現実的な適応には大きな問題が生じていなくても、潜在的な不安の高さが見られるために、能動的に「自己理解」の段階から「自己決定」へステップアップすることに困難さが生じやすいことが理解できた。 そこで、本年度の下関市でのプログラムでは、個々の参加者の「自己理解」の程度に応じた「プログラム成果の見える化」を目標とした。具体的には、合宿期間内で、参加者全員に役割を担ってもらい、それに応じたアルバイト代(参加費からのペイバックとして、図書カードでの支給)を支払うプログラムを試行的に取り入れた。その結果、視覚情報が優位なASDには、その場での効果だけでなく、下関合宿の後で、クリニックなどで面接を行った際にも、自己評価・他者評価などの結果を前年度よりも明確に覚えていることが明らかになった。
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