研究課題/領域番号 |
16K04367
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐藤 健二 徳島大学, 大学院総合科学研究部, 教授 (10318818)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 身体感覚 / マインドフルネス / 脱中心化 |
研究実績の概要 |
本研究では,身体心理学の観点に基づくトラウマ筆記の開発に向けて,マインドフルネスで強調される,身体感覚に注意を向けることの効果を検討した。マインドフルネスとは,“今ここ”での経験に評価や判断をすることなく,温かな注意を向けることといわれる。その訓練は身体感覚に注意を向ける手続きを含み,脱中心化(ネガティブな思考から距離を置くこと),そして心身健康の増進を導くと考えられている。しかし,そもそも,身体感覚に注意を向けること自体が持つ効果が明らかにされていない。そこで,感情を喚起させる画像を呈示する課題を用いて,その効果を検討した。その際,身体感覚に注意を向ける条件の対照・統制条件として,ただ画像を注視する条件,気そらし(計算課題の遂行)条件を設けた。 健常大学生を対象に,インフォームド・コンセントを取得した後,30名(平均年齢20.00歳,SD=1.17,男性4名,女性26名)を身体感覚に注意を向ける条件,ただ画像を注視する条件,気そらし条件にランダムに配置した。 その結果,身体感覚に注意を向ける条件は,ただ画像を注視する条件と同程度の感情価と覚醒度を示し,また,気そらし条件は身体感覚に注意を向ける条件,ただ画像を注視した条件と比較して,ポジティブ刺激への感情価が低かった。この結果は,身体感覚に注意を向けることは,その刺激の感情価をそのままに評価していたことを示唆する。先行研究からは,マインドフルネスなど瞑想を長期間にわたって行う者は,刺激に対する評価は制御されず,不快は不快と評価されていることが報告されている。これらを総合すると,瞑想を長期にわたって行っていなかったとしても,評価・判断をしない態度で身体感覚に注意を向けることで,思考などの内的情報の影響が低下し,刺激をあるかままのそれとして評価することが出来ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体的には,おおよそ計画に即して進んでいる。しかし,研究代表者は,所属学部における総務委員会委員長への就任,所属学会における徳島大会の開催の運営など,業務が多忙となった。そのため,必要な機器の選定と購入,研究計画の推進も遅れた。これらを総合すると,「やや遅れている」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
当該分野の専門家へのヒアリングを遂行して,遅延している機器の選定の購入・研究計画の推進を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
業務多忙につき,必要機器の選定・購入が遅れたことに伴い,当初の研究計画の推進の遅延が生じ,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
遅延していた必要機器の選定・購入について,専門家へのヒアリングを実施し,選定・購入を行い,研究計画を推進する。
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