マインドフルネス訓練とは,身体感覚に注意を向け,その切替能力を高め,自身の考えから距離を置けるようになること(距離化)を中核とした心身健康の増進技法である。しかし,それがトラウマの外傷後ストレス反応(Post-traumatic stress reactions: PTSR)を低減させること,その手続きが導入されたトラウマの筆記開示の効果は検討されていない。 本研究の第1の目的は,マインドフルネス訓練がPTSRに及ぼす効果,第2の目的は,その手続きが導入された(距離化の促進を目指して,身体感覚に注意を向けるよう構造化された)トラウマの筆記開示(距離化筆記開示)が心身健康・認知機能に及ぼす影響を検討することであった。 大学生に対してPTSRを測定するIES-R日本語版が施行された。PTSR高得点者であり,インフォームドコンセントが取得された者をマインドフルネス訓練群と待機統制群とに配置した。マインドフルネス訓練群のみにおいて,介入前から介入後,1か月フォローアップにかけて,統計的に有意にPTSRが低減した。 上記とは別に,PTSR高得点者であり,インフォームドコンセントが取得された大学生に対して, 1日1セッション15分,3日連続で筆記が施行された。主観的には苦痛度とPTSR,生理的には交感神経系(得点が高いほどストレス反応が高いことを示す),認知機能についてはワーキングメモリ容量(得点が高い程,記憶力が高いことを示す)が,3セッションの前後で測定された。 分析の結果,トラウマを想起する際の苦痛度は統計的に有意に低減していた。PTSRや交感神経系の水準も低減し,ワーキングメモリ容量は増大していたが,統計的に有意では無かった。 マインドフルネスは,その訓練でPTSRを低減させ,それを導入した筆記もトラウマの苦痛を低減させるが,その実証については,さらなる検討が必要である。
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