研究実績の概要 |
【論文】 「治療的アセスメントの臨床的有効性に関する実証的研究」のひとつとして、橋本・坂中(2012)を踏まえ「まとめと話し合いのセッション」5事例の録音記録を、人間性心理学で用いられるEXPスケール(吉良他,1992)、AQ-2(Finn et al., 1994)、SEQ-5(Stiles et al., 2002)により質的・数量的に分析した。その結果、EXPスケールのMode値は段階3から段階6に分布し、Peak値は段階6が多かったが1事例のみ段階7も認められ、心理療法としての有効性が認められた。参考値ではあるがAQ-2とSEQ-5からは、Clの高い満足度が示された。セッション内におけるEXP値の時間的推移は認められなかった。Clの発言内容を検討したところ、自己探索、フェルトセンス、そして新たなナラティブの生成といった重要な体験が生じており、ThがClとの関わりを把握する指標となることが示唆された。学術雑誌に投稿し、現在査読中である。 また雑誌論文「クライエントの話から何をどう読み取るのか?-アセスメントの基本」(臨床心理学第17巻1号, 27-30, 2017)では、治療的アセスメント(Finn, 2007)と個別化アセスメント(Fischer, 1985/1994)における、過程(プロセス)を重視したアセスメントの実際について論考した。 【学会発表】 日本心理臨床学会第35回大会自主シンポジウム「治療的アセスメントについて考える(その7)」を企画し、「治療的アセスメントにおけるパーソナリティ・認知特性の理解とCBT技法の活用」という題目で発表した。その中で、治療的アセスメントにおける自己理解のプロセスがセルフ・モニタリングの機会となること、アセスメント介入セッションを中心としたCBT技法の活用が可能であること、等について検討がなされた。
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