研究課題/領域番号 |
16K04379
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
佐々木 裕子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (40284450)
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研究分担者 |
小川 俊樹 放送大学, 教養学部, 客員教授 (60091857)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心理アセスメント / 円環母子関係イメージ画 / 円環家族関係イメージ画 / 風景構成法 / ハンドテスト / 枠づけ法 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,研究2の“多様なニーズをもつ児童の心理支援に役立つ心理アセスメント方略の開発”に関する調査データの分析と発表を行った。心理アセスメント方略としては,母子関係を捉える円環母子関係イメージ画に加えて,家族関係に関する描画法を取り入れ,ハンドテスト,母子関係もしくは家族関係を表現するイメージ画,風景構成法のテストバッテリーを用いた。 まず,ハンドテストについて,対人関係や日常生活において何らかの困難を抱えている指標とされる不適応カテゴリーの反応を出した放課後児童クラブの児童3人(男子2名,女性1名)について,円環母子関係イメージ画を検討した。一人の男児は,母親円の上に自分の円を描き,もう一人の男児は,母親円の内側に自分の円を描き,一人の女児は母親よりも自分の円の方が大きく,また非常に離れて描いた。このように,ハンドテストにおいて何らかの困難を抱えていると考えられた児童の母子関係イメージ画は,何かしら特異なイメージ画であったことが示された。 次に,家族関係を捉える方法として,『円環家族関係イメージ画』を考案した。マルで家族関係を象徴的に表現してもらう方法である。その際,マルの描画による方法とマル色紙を貼付する方法とで,異なるイメージ画が作成されるかどうかを放課後児童クラブの児童を対象に検討した。その結果,マルの描画と色紙の添付という手軽な方法で,児童が家族関係を表現することができ,どちらの方法でも同じ分類基準で家族イメージ画を分類できることが確かめられた。今後,分類カテゴリーによるイメージ画の違いが,どのような家族関係を反映しているかを検討していくことが課題となった。 風景構成法に関しては,集団での実施が可能かどうか検討する上で,描画に枠づけをするかしないかによる違いについて検討した。結果については,平成30年度に学会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,これまでのデータの分析と発表のみとなった。予定していたデータの蓄積が行えなかったが,詳細な分析により,今後の研究課題を明確にすることができた。 まず,研究1については,児童理解マトリックスとして,1)児童の心理・対人行動面の特徴を分かりやすく整理した「児童理解サマリー」,2)上記と関連づけて整理された日頃の児童の観察事項「児童理解チェックシート」,3)上記2つに基づいて考えられた児童への支援的な関わり方略「児童支援チャート」の様式を確定し,対象者10名全員のマトリックスを完成させた。今後は,この児童理解マトリックスを用いた児童支援についての事例を蓄積する必要がある。 研究2については,個別実施でのアセスメント方略について,ハンドテストと母子関係についての関連性が示された。今後,アセスメント方略の解釈可能性を深めることが可能である。さらに,児童への支援の必要性についての早期発見をめざし,集団実施における簡便な実施方法について検討した。その結果,家族関係をマル色紙を使った容易な方法で,遊びを通して捉えることが可能となることが示された。今後,表現された家族イメージ図がどのような家族関係を表しているかについてデータ収集が必要である。また,風景構成法については,新たに考案した川の構成度による10基準で見ると,枠があることで構成度が低下する可能性が示唆された。つまり,風景構成法を集団で実施する場合は,枠づけの有無によってアセスメントの視点を変える必要性があると考えられるため,今後の実施法について考慮する予定である。 以上のことから,データ収集に若干遅れがみられるが,当初の計画で平成30年度にかけてデータ収集する予定であったため,計画はほぼ順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究1の支援員と心理職の連携に関しては, 研究2の個別実施による参加者によるデータが揃った後に計画する予定である。 研究2では,当初計画していた個別での心理アセスメント方略に,集団実施による予備的な心理アセスメント方略を追加した形でのアセスメント方略について検討していく予定である。平成30年度は,個別実施による参加者を募り,データの蓄積を予定している。また,継続的な事例アセスメントも行い,支援員との連携についてより詳細な児童理解となるよう進めていく予定である。
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