レビー小体型認知症(DLB)は、変性性認知症ではアルツハイマー型認知症(AD)の次に出現頻度が高い。しかし、両疾患の臨床症状には共通点が多く、DLBを的確に鑑別することは難しい。これまでにDLBを鑑別するための心理検査がいくつか報告されてきた。しかし、これらの検査のうちどれが最も適切か比較した研究はない。本研究では、複数の検査を同一の対象者群によって比較し、DLBの鑑別に最も適切なものを特定することを目的のひとつとする。 研究実施計画としては、平成28年度~最終年度まで、AD群、DLB群、健常群のデータ収集を行った。特に平成28年度は集中的にデータ収集を行い、改善点を随時修正した。平成29年度以降は、仮分析や更なるデータを収集した上で、最終的な分析を行った。当初の対象者数の目標は、AD群100名、DLB群50名、健常群100名であった。これの対象者に対して、各心理検査における、DLB-AD(参考として健常群)の鑑別力を比較した。用いた検査は、Mini-Mental State Examination(MMSE)、ベンダーゲシュタルトテスト(BGT)、COGNISTAT、バウムテスト、時計描画検査、標準高次視知覚検査、他の視覚認知検査などであり、対象者の負担や臨床的価値を最優先に、各医療機関の臨床業務で行える範囲で実施して行った。 当初より予定していたCOGNISTATの語り課題を用いた検討やMMSEに関する検討は、国際誌に受理・掲載されている。また、現在進行中のもう1つの科研費研究課題と併せて、特にBGTについてDLB群の対象者を増やして分析を行い、その結果は国際誌に2022年9月に受理・掲載されている。同様にもう1つの科研費研究課題と併せて、現在、全国誌への投稿を目指して分析中である。
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