研究課題/領域番号 |
16K04383
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
今野 紀子 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (40349808)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 身体 / イメージ / 彩色 / 精神疾患 / 早期スクリーニング |
研究実績の概要 |
自身の身体の状態・感覚に焦点を当て、そのイメージを2枚の身体図に彩色することで、心身への気づきを促進し、健康支援を行う心理技法「身体イメージ彩色図法」を開発した。本技法の実施によって、対象者の抑うつ感や疲労感が有意に低減することが確認されているが、本技法では、身体イメージの彩色作業を通じて対象者の抱える心身の健康問題・自己イメージが外在化(可視化)されるため、様々なアセスメントに使用が可能である。このアセスメント機能を、うつ症状などの精神疾患のスクリーニングに利用し、身体図の彩色パターンの特徴解析によって未病期を含めた症状の早期発見・早期対応を実現する分析スキームを構築することを目的としている。 平成28年度・29年度は、(1)身体イメージ彩色図法のデータ収集と症状別彩色パターンの特徴解析を実施した。対象者の状態・うつ症状などの精神疾患の有無や程度と、身体イメージの彩色図のパターンの特徴解析を行うため、幅広い対象者でフィールドテストを実施し、有効データの調査・蓄積と分析を行った。並行して、身体イメージ彩色図法実施後の自由記述内容の検討を行った。(2)身体イメージ彩色図法が与える精神心理的作用の定量分析を行なった。不安感情レベルによって状態不安の変化に相違が現れるかを検討した結果、高特性不安群・コントロール群とも状態不安が有意に低下した。さらに高特性不安群では不安存在を示唆するネガティブ感情がコントロール群より有意に低下した。(3)ストレスマーカーの唾液アミラーゼを用い身体イメージ彩色図法の生理的作用の定量的分析を行なった結果、唾液アミラーゼ活性が有意に低下し、ストレス低減効果が認められた。(4)モバイル端末を利用した身体イメージ彩色図法システムの検証とデータ収集を実施し、セルフ・トリートメント効果の検証と、彩色パターン等のデータを集積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度として、以下の点があげられる。 (1)対象者の状態・うつ症状などの精神疾患の有無や程度と、身体イメージの彩色図のパターンの特徴解析を行った。その結果、軽度抑うつ状態の身体感覚の可視化ならびに抑うつ状態軽減支援についての有用性が認められた。また、状態不安の低減効果があることがわかった。 (2)ストレスマーカーの唾液アミラーゼを用い、身体イメージ彩色図法の生理的作用の定量的分析を行なった。その結果、唾液アミラーゼ活性が有意に低下し、ストレス低減効果が認められた。 (3)身体イメージ彩色図法を用いた発達障害学生の支援について事例研究を行なった。発達障害では自身の心身に対する理解が難しく、問題などへの認識のずれや、ない場合も多い。また、感情などを言葉で表現することが苦手な場合も多い。対象者自身の自己認知や状況把握のためのツールとして、また、支援者が対象者とともに振り返りながら、気づきを得えつつ、支援のヒントを得るためのツールとして、本法の活用ができるのではないかと考えられた。 (4)モバイル端末を利用した身体イメージ彩色図法システムの検証とデータ収集を実施し、セルフ・トリートメント効果の検証と、彩色パターン等のデータを集積した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、以下のように研究を推進する。 (1)症状別身体図の彩色パターンの分析スキームを構築:うつ症状などの精神疾患のスクリーニングや予防的なメンタルケアに役立てることができるよう、身体図の彩色パターンの特徴解析によって未病期を含めた症状の早期発見・早期対応を実現する分析スキームを構築する。 (2)モバイル端末を利用した身体イメージ彩色図法システムの効果的活用の検討:モバイル端末を利用した本メソッドを継続的に行うことでの作用についての検証と、本メソッドを量的・質的側面から評価し、健康支援への効果的な活用方法について検討する。 (3)研究成果のアウトリーチ:本研究によって得られた成果・知見を、関係の各学会・シンポジウムで発表、ホームページへの掲載により広く社会に紹介する。特にメンタルヘルスに関心を持つ人々に、本研究の意義やメソッドの周知を図る。また、隣接テーマや手法を有する他研究との交流を深め、本研究の次の課題を発展的に展望する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)一部、心理検査用紙の購入手配が遅れたため。 (使用計画)心理検査用紙の購入に使用する。
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