自身の身体の状態・感覚に焦点を当て、そのイメージを2枚の身体図に彩色することで心身への気づきを促進し、健康支援を行う心理技法「身体イメージ彩色図法」を開発した。本技法の実施によって、対象者の抑うつ感や疲労感が有意に低減することが確認されているが、本技法では身体イメージの彩色作業を通じて対象者の抱える心身の健康問題・自己イメージが外在化されるため、様々なアセスメントに使用が可能である。このアセスメント機能をうつ症状などの精神疾患のスクリーニングに利用し、身体図の彩色パターンの特徴解析によって未病期を含めた症状の早期発見・早期対応を実現する分析スキームを構築することを目的としている。 主な研究業績を以下に示す。(1)うつ症状などの精神疾患の有無や程度と、身体イメージの彩色図のパターンの特徴解析を行った結果、抑うつ状態の身体感覚の可視化ならびに抑うつ状態の軽減・状態不安の低減への有用性が認められた。うつ症状などの精神疾患のスクリーニングや予防的なメンタルケアに役立てる可能性が示された。しかしながら,分析スキームの構築については,十分とはいえず,更なる検討が必要である。(2)ストレスマーカーの唾液アミラーゼを用い、身体イメージ彩色図法の生理的作用の定量的分析を行なった。その結果、唾液アミラーゼ活性が有意に低下し、ストレス低減効果が認められた。(3)身体イメージ彩色図法を用いた発達障害・アレキシサイミアの支援について事例研究を行なった。身体図の彩色を用いた外在化は、対象者の自己客観視の契機ともなり、第三者との情報(状態)共有も容易であった。自己の情動を意識し表現することが困難な者であっても、自己の情動への気づきの促進、および支援が期待できる。(4)モバイル端末を利用した身体イメージ彩色図法システムにより、健康支援への効果的な活用方法とセルフ・トリートメント効果の検証を行った。
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