研究課題/領域番号 |
16K04395
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
榊原 雅人 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (10221996)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心拍変動バイオフィードバック / 心拍変動 / 圧受容体反射 / 随伴性陰性変動 / バイオフィードバック |
研究実績の概要 |
平成28年度の主な検討目的は心拍変動バイオフィードバック(heart rate variability: HRVBF)を実施した際、圧反射感度(baroreflex sensitivity: BRS)が実際に高まるかどうかを検討し、この際、皮質活動の指標となる脳波の随伴性陰性変動(contingent negative variation: CNV)が同時に低下するかどうか確認することである。そのため、はじめにBRSおよびCNVの測定システムの構築を行い、それぞれの生理的指標の分析に関わるシステムを構築した。BRSは連続血圧装置によって収縮期・拡張期(および平均)血圧を測定した後、併行して測定した心拍変動との関係から回帰係数およびスペクトル分析パワー比を用いてBRS感度を評価した。また、CNVは脳波測定を通して予告信号の後のボタン押し課題において生じる陰性の電位変化を評価するシステムを構築した。 一方で、BRSを確実に増加させるためにHRVBFの効率的な手続きを確立しておく必要性が生じてきたため、当初計画を一部変更し、HRVBFにおける共鳴周波数の効率的な検索手続きを開発した。具体的には、安静時の心拍変動をスペクトル分析した際の低周波(0.04~0.15Hz, low frequency: LF)成分に着目し、当該成分のピーク周波数をもとにペース呼吸を行った際、HRVBFの従来法に比較して有意に大きなスペクトルパワーが得られることがわかった。この結果はHRVBFにおける緩徐なペース呼吸をLFピーク周波数に合わせることによって、従来法よりも心拍変動より増大させることができることを示唆している。本研究成果は論文として発表した(印刷中)。したがって、このようなHRVBFの手続きを採用することでBRSの増加を確実に起こさせることが可能になると考えられた。 今後、BRSおよびCNVの測定・分析システムの最終調整を経て、平成28年度において開発した効率的なHRVBFの手続きを実施した際のBRSの増加(およびCNV振幅)の程度を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の検討計画では、心拍変動バイオフィードバック(heart rate variability: HRVBF)を実施した際に直接的に圧反射感度(baroreflex sensitivity: BRS)の変化を検討する目的であったが、BRSを確実に増加させるHRVBFの効率的な手続きを予め開発しておくことによって、期待する結果の予測性・確実性を高めることを優先した。 計画を一部変更することになったが、本年度開発された手続きはHRVBFに関わる基礎的検討において汎用的に適用可能であり、この手続きによるHRVBFがもたらす結果には頑健性があるため、今後の検討課題(すなわち、HRVBFの実施によるBRSの増加)を円滑かつ確実に進めることが可能になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は心拍変動バイオフィードバック(heart rate variability: HRVBF)が圧反射感度(baroreflex sensitivity: BRS)を増加させ、それによって皮質活動の指標である脳波の随伴性陰性変動(contingent negative variation: CNV)が同時に低下するかどうかを確認する。 具体的に、実験参加者を30名程度を募集し、HRVBF群およびControl群として設定する。HRVBFは平成28年度に開発した手続きを採用して効率的にBRSを引き起こすこととし、一方でControl群はBRSの増加が期待されない約0.5Hzのペース呼吸を実施する。これらにおいて、CNVを評価し、BRSを高めるようなHRVBFがCNVに反映される大脳皮質活動を効率よく低下させるように働くかどうかを確かめる。 平成30年度においては、BRSの増加を引き起こすHRVBFの日常練習がCNVの低下に伴う不安や抑うつの低下、あるいはリラクセーション効果を効果的にもたらすかどうかを検討する。この目的のため、不安や抑うつ傾向の高い研究協力者に対して14日程度のHRVBFの自宅練習を依頼し、その前後における実験室検討を通してHRVBFがCNVに及ぼす効果を検討する予定である。
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