心理テストバッテリーについて、発達障害児者とのかかわりから、知能検査と予後の関係、有効な支援について考察を進めた。そして、知的機能に軽度の発達の遅れがある程度なら、周囲の支援によって適応が良いことが判明した。さらに、適応指導教室での相談事例のWISC-Ⅲと描画法を比較して、知的機能のみでなく情緒的な背景や問題を考慮する対処が重要であると考えられた。それを元に、健常学童の風景構成法を実施し、この技法が問題児童のスクリーニング技法として使用するための研究途中にある。 次に対象関係投映法(ORT)を実践的に使用するための研究として、健常者を対象として、パーソナリティーが対象関係投映法にいかに表れているかの研究を行った。健常学生の結果を検討し、質問紙法及び、ロールシャッハ法との比較検討をした。その結果、ORTはロールシャッハ法と比べてより現実的で日常的な場面での対象関係のあり方が反映されることが理解された。 さらに、臨床的な有効性と実践性を探索するために、臨床群として統合失調症の事例群の検討を行った。それによって病理的側面、発達的側面、情緒的側面でORTとロールシャッハ法を比較し、ORTでは物語作成の課題の中で顕著な特徴が見られ、現実吟味力の低下、対象関係の未熟さが露呈することが分かった。ORTでは情緒的側面から日常的なネガティブな感情が表現されていることが多く、心理療法的に生かすことでの有用性が考えられた。ロールシャッハ法との比較では、双方の技法が補完的な査定範囲を持っていることがうかがわれ、心理テストバッテリーとして有効な使用法に繋がることが示唆された。 ORTに関しては、使用マニュアルの翻訳を進めており、著作者のDr.Shawとのコンタクトを取って翻訳権の交渉をして翻訳を進めていたものの、Dr.Shawが急逝して進め方に課題が残されたが、今後も方策を探っていく。
|