研究課題/領域番号 |
16K04401
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
廣井 亮一 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (60324985)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 司法臨床 / 法的機能 / 臨床的機能 / 対人援助者 / 非行・犯罪 / 児童虐待 |
研究実績の概要 |
2016年度は研究計画の通り、法や臨床の専門家ではない「対人援助者」が司法臨床による援助を実践できるようになることを目的として、対人援助者の援助の実際をヒアリング調査して、その援助過程における司法臨床の応用可能性を実証的に研究するためのデーターを収集した。 本研究の対象者である「対人援助者」とは、家庭相談員、保護司、民生委員、青少年委員、母子相談員、など特に必須とされる資格はなくとも、人格識見が高く社会的信望がある者による「人を援助する」という実践的行為に携わる者である。援助の対象としては、家庭の問題として児童虐待や離婚に伴う子の奪い合い、青少年の問題である非行、成人の犯罪ではストーカー問題など、法と臨床に密接に関わる問題を主に取り上げている。 対人援助者の援助において期待されていることはいわゆる社会的常識や見識にもとづいた対応であるが、彼らが対象にする諸問題は、極めて法的事項と絡みさらに人間関係など臨床的関与が必要になる問題や紛争である。 そのような諸問題に対人援助者が対応するためには、経験だけに頼ることには限界があり、ましてや独善的な価値観による対応は避けなければならない。そのために対人援助者が司法臨床の機能を援助のどの段階でどのレベルまで適用することが可能かについての見極めを行っている。ヒアリングの感想の例として、ある町の子育て指導員は「「法」を知識として持ちながらかかわることにより、的確にかつ柔軟に支援していくことが大切だということがヒアリングを受けながら分かった」またある市の家庭児童相談員は「ヒアリングで「法」と「臨床」の協働というこれまでにない視点を知ることができて勉強になった」と述べた。 また、研究成果の報告のために著書の出版を内諾している有斐閣と企画内容の打ち合わせを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は研究計画の通り、法や臨床の専門家ではない「対人援助者」の援助の実際をヒアリング調査を実施してデーターを収集することができた。ただしデーターの分析は未だ完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
得られたデーターはトランスクリプトしたうえで、GTA(グランデッド・セオリー・アプローチ)により分析している。分析内容としては、事例の関与から終結までの経過に沿いながら、対人援助者として具体的にどのような関与を行ったのか、援助において戸惑ったこと、困難に陥ったことなどをその局面ごとに詳細に把握することで対人援助者の援助と関わりの特徴や課題、問題点を明らかにする。 次に、法と臨床の観点(たとえば、法的な強制・禁止・罰的措置などと、臨床的な受容・共感など)からデーターを再分析することによって、対人援助者による司法臨床のアプローチの可能性について概念図としてまとめる。 さらに以上の分析をもとにしながら、対人援助者に向けた司法臨床のモデルの基盤を構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定してた海外出張(学会、調査)の日程が調整できなかったため、海外出張を中止したため。
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次年度使用額の使用計画 |
海外出張(国際学会等)を年2回、国内出張(国内学会等)を年数回行う予定である。 その他、パソコン購入、資料費、専門家招へい等に費消する。
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