研究課題
吃音のリハビリテーションは十分に確立していない。また吃音の機序も十分明らかにされていない。本研究の初期評価の結果,吃音者では左耳から聞いた時には,左右の脳が活性したが,右耳から聞いた時には,左脳言語聴覚野の活性が不十分なことが示された。このことから,吃音者では,脳機能以前に,聴覚系統に問題があることが示唆された。そこで,聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Responce: ABR)検査を行ったところ,吃音者は流暢者に比べ聴覚伝導が遅い事が示された。特に中・重度吃音者では,右耳の聴覚伝導が遅いこと,軽度吃音者では,左耳の聴覚伝導が遅い事が示された。また聴力の正常な中・重度吃音者から,聞こえが悪いとの訴えもあった。訓練方法として,右耳から言語音・左耳からホワイトノイズを聴いて復唱する訓練を,1年以上行ってもらった。その吃音訓練の効果判定として,初回評価と同じfunctional Near-infrared Spectroscopy (fNIRS)を用いて,左右耳で別々に聞いた時の脳機能の活性を評価した。また初回に評価した吃音検査法の再評価も行った。その結果,特に,中度吃音者の文の復唱課題において,右耳から聞いたときに,左脳の活性が認められた。さらに同じ吃音者において,吃音の重症度も中度から軽度へと改善がみられた。しかし,軽度吃音者では,左耳の方が聴覚伝導が遅い事から,訓練方法の再検討が必要であると考えられ,今後は,重症度別の介入が必要であると示唆された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
コミュニケーション障害学
巻: 37 ページ: in press
http://www/jacd-web.org/