本年度は引き続き、保護観察所と連携して成人用リスクアセスメントツールであるLS/CMIについて、成人犯罪者のデータを収集しており、順調に推移している。 非行少年の保護的因子については、SAPROFの少年版について得られた少年鑑別所のデータについて分析を行い、非行少年が有している保護的因子が少ないことを確認し、研究の進展が見られた。また、保護的因子についてはSAPROFの他に、世界的にも普及しているSAVRYを利用した研究を進めており、家庭裁判所に係属した非行少年と矯正領域(少年院、少年鑑別所に入所した非行少年)の非行少年について、調査を実施予定である。このうち、矯正領域については、一部、データの採取が可能となった。 また、家庭裁判所に係属した在宅事件の非行少年のデータと少年鑑別所に入所した非行少年のデータを結合することにより、我が国の非行少年について、より一般的な性質、傾向を把握する分析を進めている。具体的には、傾向スコアを用いて、社会内処遇と施設内処遇の効果の比較を行なった。施設内処遇には社会内処遇と比べて再犯リスクの高い非行少年が入所することから、単純な比較が困難であるところ、準実験の手法を用いてその困難さを克服した分析である。結果として、従来に試みられていた欧米の研究と結果が異なり、施設内処遇の方が再犯防止効果が高いという知見が得られた。これは我が国の少年保護法制において、効果的な施設内処遇が行われていることを示す意義のある知見と考えられる。この分析の結果の一部についてはアメリカ犯罪学会の年次大会において発表した。
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