本年度は、成人犯罪者のデータとして神戸刑務所との共同研究を実施することが可能となり、性犯罪受刑者の再犯について保護的因子をSAPROFで測定し、リスク要因をSVR-20で測定する研究を進めることとなった。リスク要因の発現を保護的因子が、抑制できるか否かについて、直接的な分析を行った。分析の結果、サンプルサイズが現状では少ないという問題はあるものの、リスク要因よりも保護的因子の方が、受刑者の再犯防止に機能することが示された。 非行少年の保護的因子については、世界的に普及しているSAVRYを用いた研究を継続して、データ収集を実施した。東京家庭裁判所及び関東医療少年院と共同研究を実施して、リスク要因と保護的因子を同時に測定したデータを分析したところ、保護的因子が再犯を抑制していることが明らかとなった。この研究については、本年度の日本犯罪心理学会にて発表を行なった。 事案が軽微等の理由により犯罪に及んでも在宅での取り扱いとなった非行少年から、心身に著しい故障が認められることから医療少年院送致となった非行少年まで、幅広くデータを収集することができ、研究の進展が見られた。異なる非行深度を持つ非行少年であっても、保護的因子がリスクを抑制している可能性が認められた。 再犯を防止する上で、保護的因子の存在が重要であるという知見が得られつつあり、これは非行少年及び受刑者が社会に戻った後で適切なサポートを得ることの重要性が示されたと言える。
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