非行少年の再犯に影響を与える要因として、家庭裁判所に係属した在宅事件の非行少年にまで対象者を広げて、リスクアセスメントツールの適用可能性を確認した。その結果、我が国の非行少年全体の約90%を占める、いわゆる在宅事件でも、我々が邦訳を行ったリスクアセスメントツールであるYouth Level of Service / Case Management Inventory(YLS/CMI)の合計得点によって再犯リスクを査定できることが検証された。 また、再犯を促進するリスク因子とは別に,再犯を防ぐ方向に作用するとして、近年注目を集めている、保護的因子の再犯防止機能についても、上記と同様に非行少年を対象とした調査を実施した。保護的因子の測定には、リスクアセスメントツールであるSAVRYにおける保護的因子項目を用いた。分析の結果、非行少年の内、再犯群は、非再犯群と比べて、保護的因子が有意に少ないこと、保護的因子は再犯と有意な負の相関を有していることが認められた。これらの結果は,SAVRYの保護的因子6項目が再犯とは逆方向に作用していることを示すものであった。 本研究は、リスクアセスメントツールの我が国の非行少年に対する適用範囲を大幅に拡張せたという意義がある。また、従来、世界的に確立した知見として用いられてきた、リスク要因のアセスメントに基づく再犯防止教育という枠組みに、保護的因子による再犯防止効果を組み込むことの有用性が示唆された点で、従来のリスクアセスメントアプローチに新たな視点をもたらすことができた。
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