研究課題/領域番号 |
16K04410
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
山本 文枝 安田女子大学, 心理学部, 准教授 (40369161)
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研究分担者 |
船津 守久 安田女子大学, 心理学部, 教授 (40117049)
後藤 まゆみ (西まゆみ) 安田女子大学, 心理学部, 准教授 (60218104)
藤沢 敏幸 安田女子大学, 心理学部, 教授 (70351997)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大学生 / 自己概念 / 自閉症スペクトラム / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラムに代表される社会性の発達障がいのグレーゾーンにいる大学生は支援につながりにくいことから、本研究では大学教育の中でコミュニケーション能力を育成する支援のためのカリキュラムを開発することを目的としている。カリキュラムの開発にあたっては、発達障がいによる2次障害の発症にかかわる問題に配慮し、コミュニケーションスキルの向上及び行動の変化に加え、自己概念の肯定的変化をねらうものとしている。 大学教員の意識調査も行い、大学の実態に即したカリキュラムの実施形態について検討する。また、発達障がい者のみならず全ての大学生の自尊心や自己肯定感を高め、社会に出ていくための意欲向上や自信の獲得につなげることもねらいとしている。 当該年度は、カリキュラムの構成内容と実施形態について検討するための基礎資料を得るために次の調査を行った。 大学生のWeb調査は、研究者が県内複数の大学で直接募集をした。自閉症スペクトラム傾向、自己概念、コミュニケーションスキル及び実際の行動、大学生活(授業、サークル活動、アルバイト)におけるコミュニケーションの経験の実態について定期継続的に同じ対象者に3回行った。インタビュー調査はWeb調査の参加者から募集し、実際に研究者の所属する大学の面接室にて実施した。さらに、同様のWeb調査を調査会社会員の大学生対象にも実施した。得られたデータから大学生の大学生活におけるコミュニケーションの経験と自己概念の変化との関連性について検討を行い、カリキュラム作成のための基礎データとする予定である。 大学教員は、調査会社会員対象にWeb調査を実施した。調査内容は、発達障がいに関する知識、発達障がいの可能性のある支援が必要な身近な大学生に対する意識および授業内外で現在行っている取り組みの実態等で、得られたデータは大学教育での実施形態について検討を行う基礎資料とする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度(平成28年度)におけるWeb調査およびインタビュー調査は7月に開始予定だったが、倫理審査の関係で11月にずれての開始となった。研究者が直接募集をした大学生のWeb調査は、約1ヶ月以上の間をあけて定期継続的に合計3回(平成28年11月~平成29年2月)、対象者の匿名による関連づけ(紐づけ)を行った。2回目のWeb調査ではインタビュー調査の募集も行い、約1時間の面接調査を2月に実施した。同様のWeb調査を、調査会社の会員の大学生にも実施した(平成29年1月~3月)。調査会社会員の大学生にはインタビュー調査の募集は行っていない。 大学教員は、調査会社会員対象に行った(平成29年1月)。研究者が直接募集する大学教員の調査は現在実施が遅れており、今後行う予定である。 現在は得られたデータをもとに分析を行っている。自閉症スペクトラム指数の程度、自己概念、コミュニケーションスキル、実際のコミュニケーション行動、大学生活における主な活動経験との関連について分析を行っている。 大学生のインタビュー調査によって得られた質的情報は、テキストデータに変換し、自己概念、コミュニケーションスキル、実際のコミュニケーション行動、大学生活における主な活動経験に分類して検討を行っている。今後はさらにテキストマイニング方法によって、定量的分析を行ってテキストデータを単位に分解し、それらの関係性をとらえる客観的分析によって調査対象者個別の分析を行うと同時に、調査対象者全体の統合されたデータの分析も行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度(平成28年度)の実態調査で得られたデータをもとにカリキュラム案の検討を行う予定である。そのために、前半では学生の自己概念、コミュニケーションスキル及び実際の行動の問題点を分析する。大学生においては、自閉症スペクトラム指数とWeb調査の期間中に変化のあった自己概念、コミュニケーションスキル、実際のコミュニケーション行動との相互の関連について分析し、それらの変化に対応すると推測されるコミュニケーションに関わる体験を抽出する。また、学生のどのような経験が、自己概念やコミュニケーションスキル及び行動の変化と関連があるのかについて分析を行い、問題点を解決するためのカリキュラムの構成内容について明らかにする。ついで、試行的カリキュラムを研究代表者及び研究分担者の所属する学科のクラスで実施を行う。1クラスは約50人、毎週1回のホームルーム形態の通年の必修科目が展開されているため、その時間の一部を利用した効果検証が可能である。 カリキュラムの実施形態については、前年度の大学教員の調査で得られたデータも参考に検討を行う。通常の授業の一部を利用した短時間のユニット形式のカリキュラム、ホームルーム形式のクラス単位で行うカリキュラム、集中または分散型の特設カリキュラムなど、また授業中の声かけなど複数の試案を作成する。 カリキュラム実施と効果検証においては、研究代表者および研究分担者が所属する大学の通年の必修科目である週1回のホームルーム形式の授業で行う予定である。1学年2クラスを実施群と統制群に分けて比較検証をする。実施時期は、後期授業期間で行う予定である。実施前後での質問紙調査、最後にインタビュー調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度(平成28年度)の大学生対象のWeb調査においては、研究者が直接募集する大学生対象の調査のみを当初計画していた。大学生の調査は、約1ヶ月間隔で3回の定期継続的調査であったが、計画した方法ではWeb調査参加の報酬がないこともあり、3回分のデータ数の確保が危ぶまれた。よってデータ数確保の強化をはかること、さらに性別を含め対象とする大学生の幅を広げることを目的とし、調査会社会員の大学生対象のWeb調査も追加で実施することとしたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度(平成28年度)は、大学生対象と大学教員対象のWeb調査による実態調査を個人情報の保護の徹底をはかるため、契約する調査会社を介して行った。大学生の参加は、研究者が授業の一部の時間を利用し説明(研究の趣旨、倫理的配慮など)して調査への参加を呼びかけ、同じ対象者に定期継続的に3回の回答を依頼した。研究者が所属する大学以外にも協力依頼をした。計画上変更した点は、上記調査方法に加え並行して、Web調査会社会員の大学生対象にWeb調査を行ったことである。
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