研究課題/領域番号 |
16K04412
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
矢島 潤平 別府大学, 文学部, 教授 (30342421)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生活習慣 / 健康状態 / 健康知識 / 睡眠時間 / レジリエンス / 幸福感 / 唾液free-MHPG / 起床時コルチゾール反応 |
研究実績の概要 |
本研究は,臨床心理学的介入による生活習慣の改善と心理生物学的ストレス反応の軽減との関連性を,フィールド調査,実験室実験及び介入実践研究を用いて検証することを目的とした。本年度は,フィールド調査研究によって,生活習慣(睡眠,運動,食習慣,嗜好品の摂取等)の状況と心理社会的要因(研究1),バイオマーカー(研究2)との関連性を検討しそのメカニズムを把握することを目的とした。 (研究1)生活習慣と心理社会的要因との関連性 方法:大学生を対象者に集団法にて,日本版健康関連行動調査,日本語版主観的幸福感尺度,心理的ストレス反応尺度,S-H式レジリエンス尺度,UCLA孤独感尺度,精神健康調査票(GHQ-28)及びうつ尺度(CES-D,BDI)を実施した。結果:望ましい生活習慣を実施している個人(睡眠時間7-8時間,運動習慣がある,過度な飲酒がない,喫煙していない,健康行動を実践している,健康知識を持っている等)は,ソーシャルサポートが高く,ストレス反応や抑うつ得点が低いことが示された。加えて,孤独感が低く,対人場面における自信のなさや緊張,消極性が低かった。考察:過去の知見と同様に望ましい生活習慣を実施している個人ほど健康状態が良好であるとともに対人コミュニケーションスキルを持ち合わせていることを示唆している。 (研究2)生活習慣とバイオマーカーとの関連性 実施状況:対象者に起床時,起床30分後及び就寝時の唾液を平日と休日の2回採取してもらうとともに,気分や健康状態を記録日誌に記入してもらった。後述する進捗状況等に記載のとおり,本年度熊本・大分地震発生による緊急支援等の対応にあたったため,研究開始が大幅に遅れ,唾液を試料としたアッセイが終わらず,データ収集にとどまっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4月16日に発生したいわゆる熊本・大分地震によって本学ならびに研究代表者はかなりの被害を受け,こころのケア等の対応も行った。そのため実質的に研究を始められたのは,後期(10月以降)からであった。倫理委員会の審査は震災発生前に終わっていたため,フィールド調査は後期すぐに取り組むことができ実績概要に示したとおり研究成果を示すことができた。しかしながら,起床時コルチゾール反応や唾液free-MHPGといったバイオマーカーの解析に至らず,本研究における望ましい生活習慣の基準を本年度中に設定できなかった。しかしながら,すでにサンプル収集までは終わっており唾液アッセイの処理は平成29年度中に終えることができるので,研究遂行の遅れは取り戻せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,研究計画書に従って実施する。特に平成29年度は,研究1と2によって同定した望ましい生活習慣の基準に基づいて,フィールド-実験研究を行う。 対象者は,研究1と2にて設定した望ましい生活習慣を実施している個人(適切な生活習慣を実施し,ストレスの自覚が少ない)と実施していない個人を20名ずつ無作為に選抜する。 実験手続き(矢島,2012):実験室に入室後,10分間の順応期,メンタルストレステスト(スピーチ課題(5分)と暗算課題(5分)あるいは統制条件(モニターにて自然映像を流し視聴,10分))を施行し,30分間の回復期を設定し実験を終了する。課題期前後と回復期(15分経過時と30分経過時)に唾液採取とストレス状態質問紙の評価を行う。実験中,心拍,HF波及びLF/HF波を連続測定する。ストレス条件と統制条件をカウンターバランス条件で同一対象者に2回行う。 心理生物学的ストレス反応性:唾液free-MHPG,唾液s-IgA抗体産生量,唾液コルチゾール,心拍,LF/HF波,HF波(心拍ゆらぎシステム:矢島ら,2010)及びストレス状態質問紙(エネルギー覚醒,緊張覚醒,課題への注意集中,不快なストレス及び気がかり:津田ら,2004)。 結果の分析:生活習慣の状況のいかんによって,PNEI 反応(コルチゾールの上昇,s-IgA 抗体産生量の低下,MHPG 含量の増加),心臓血管系反応(心拍,LF/HF波,HF波)及び主観的ストレス反応がどのように異なるのか比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本・大分地震発生に伴って,バイオマーカーの測定する時間がとれなかった。そのため測定に必要なコルチゾールキットの購入を見送ったため残高が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
唾液を試料としたコルチゾールとfree-MHPGの測定を平成29年度中に実施する。
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